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ガプラ樹林での捜索は容易には終わらずその日はすでに次の日と言われる時間帯まで続いた。

無闇矢鱈と最新のライフルを撃つPSICOMと実践経験豊富な警備軍が普段連携を取れていないのに取ろうとする(実際は取ろうともしなかったが)とこんなにも苦戦するのかと警備軍全員が思った。

ライフル音に身を潜めていた警備軍は全てと言ってもいいほど邪魔をされていた。

しょうがないのでウィッシュの装飾品をフルに生かしてモンスターを一箇所に集め、そこをPSICOMが狙い打つという作戦で事なきを得る。

終わった時間を考えて、ウィッシュを含めたボーダム治安連隊はその日はボーダムには帰らずにガプラ樹林の警備軍、森林監視大隊にお邪魔することにした。


「ふぃー、いい湯だったぜ。」


自然に囲まれている天然の温泉がある、ときいて治安連隊はここに全員残ったようなものだ。

まさに自然に囲まれた湯。最高の眺めに思わず出たのは詠嘆の溜息だった。

ぜひともライトニングも体験してみればいいと彼女にあてがわれたルームまで行こうと自分にあてがわれた部屋とは反対方向に足を運んだ。


「お?」

「ウィッシュ、久しいな。」


ルンルン気分で歩いて数歩、普段見慣れない顔に驚きを隠さずにウィッシュは破顔させた。

久しい友との再会をウィッシュは心底嬉しかった。


「ロッシュー!久しぶり!!元気だったか?」

「相変わらずだな。ウィッシュは?」

「うん、俺はいつでも。」

「だろうな、PSICOMでもお前の名前は聞いてる。」


自分の名前をPSICOMで聞くというロッシュにウィッシュは不安を隠せなかった。

友人の口から、自分の評価は出来るだけ聞きたくない。誰だってそうであろう。

眉にしわが寄ったのをロッシュが確認し、ウィッシュの眉間に親指をぐりぐりと押し付けた。


「何すんだよロッシュ、痛い。」

「そんな顔してるからだ。いいか、お前の名前を聞いているのは悪い評価でも馬鹿げた評価でもない。私が中佐と言う立場だからだ。」


この意味が解るか、とロッシュに諭されてウィッシュは戸惑いながらもしかと頷いた。

評価を友人として聞いているのではなく、立場上聞いている、その意味は多分   


「公安情報司令部少佐として君を受け入れたい。」


ああ、やはりとウィッシュは遠くのどこかで納得した。

ここにロッシュがいるのも、わざわざPSICOMと合同実践まがいな物を昨日したのも、全て納得がいったのだ。

あれはウィッシュのためだ。ウィッシュの昇格試験が密かに行われていたのだろう。

これはどの位の人に知られているのだろうか。ロッシュのことだから自分の判断だけではないだろう。

警備軍はPSICOMを嫌ってはいるが決して昇格を望んでいないことはないのだ。

しかも自分の場合飛び級もいいところだ。

何がどうそんなに買われたのか解らないが中尉から少佐へだって?階級2つほど吹っ飛ばして夢のPSICOMだなんて、それこそ夢のようだ。

だけど   


「ごめんロッシュ、その話には乗れない。」

「……なぜだ。」

「自分に、その力量を感じられないからであります。それに   


それにやはり自分は彼女の傍にいたい。

傍で守っていたい。

ライトニングを支えていきたいのだ。

格式張った返答はロッシュ中佐へ、そして今から向ける言葉はロッシュ個人に向けて放つ言葉。


「大事な人を、守りたいんだ…。」

「……」


中佐向けの言葉とロッシュ向けの言葉、どちらも寸分の狂いもなく届いたことはやはりその眉間の皺で語られていた。


「大切な人、というのは、やはり軍の中にいるのか。」


カ、と頬が赤く染まるのをウィッシュは自覚した。

その問いはライトニングだと断定されたものと捉えても過言ではない。

ウィッシュは解りやすい自分にプレスターをお見舞いしたくなった。

もじもじと俯いてコクンと頷くウィッシュのなんと気味の悪いことか。

これがまだ女性がやるのなら許せるがウィッシュがやったところで彼に恋慕の想いを抱いていない限り気味が悪くていけない。

ウィッシュはロッシュの視線に気がつかずペラペラとライトニングのいい所をあげていく。

それが全部はるか先で歩みを止めてこちらを見ている女性であると知ったロッシュは鋭い殺気と眼力で、お風呂に行こうとしたライトニングを睨み付けるのであった。










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