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「支えてくれてありがとうライトニング、もう大丈夫。」

「ホープとヴァニラにも礼を言うといい、治療したのはあいつらだ。」

「そっか…。」


うーん、と伸びをしているウィッシュは、次にこきこきと首の骨を鳴らす。

なんとも仕草が親父そのものである。

そのままウィッシュはホープとヴァニラの元へ歩き出した。


「ウィッシュ兄さん…。」

「ホープ、ケアルありがとうな。大分楽になったよ。」

「まだ痛い所あったら言いなよ?」

「ん、ヴァニラもサンキュ。」


頭1個分以上小さいヴァニラの頭に手を置きウィッシュはにこりと微笑んでもう大丈夫と言った。


「それにしても、俺がいない間に随分仲良くなったんだね?」

「へ?」

「え?」


ウィッシュがニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながら言えば、二人からは素っ頓狂な声が発される。ウィッシュの視線の先を辿れば、繋がれている二人の手。

わ、わ!と慌てて赤くなる頬を止められずにいるホープとは逆に、解かれようとした手を強くヴァニラは握り締めた。


「うん!いいでしょ〜?」

「兄ちゃん、ちょっとジェラシー。」


ケラケラと笑うその姿は微塵もそんな事を感じさせない。そんなウィッシュに、どこか懐かしむような視線をヴァニラは送った。

似ていたのだ。自分の大切な人と、目の前の男が。


「ま、ジェラシーよりも喜ばしいけどな。」

「喜ばしい?」

「だって、俺の大切な人達が繋がっていくんだ、嬉しいだろ?」


   こういう仲間を大切に思ってる部分、似てるんだよね

右目の下に黒子を持つ仲間を案じながらヴァニラはウィッシュを見やる。


ライトニングはそれをどこかいらいらした気持ちで見つめていた。


この非常事態に、なんて暢気な奴らだ


いつ聖府軍が追いついて戦闘になるかも分からない。そして周辺にうろついているシ骸にも余り気付かれずにここを脱出したいというのに。


「暢気な奴らだな。」

「貴様に言われたらおしまいだな。」


サッズがライトニングに同意を求めるが、彼女は冷たくあしらった。

ふと、サッズは違和感を覚える。

これまで何度もライトニングの冷淡でにべもない態度だったのに関わらず、今はどこか苛ついた様子だ。

ライトニングの言動はきついものがあったが、スノウに対して以外はむやみに苛ついたりせずに対応するというサッズの彼女への印象が少しぶれた。

しかし、視線の先を辿ればそこにヴァニラがいる。


「はっは〜ん……。」


サッズにかまわず歩き出してしまったライトニングは妙に納得している様子のサッズに気付かない。


「いやはや、皆さんお若いねぇ。」

「サッズ、独り言か?」


ホープの手を引いてさっさと行ってしまったヴァニラの背中を見つめていれば、ライトニングが通り過ぎる。

その後ろからわざとらしい笑みを作っているサッズに追いつかれたウィッシュがその笑みに若干身を引く。


「いやな、青春だよな。」

「は?」


父ちゃんは応援すっぞ!!といきなり大きな声を出したサッズに、ウィッシュは思わず訝しげな視線を送ってしまった。



再び歩き出してみれば、少し大きめな波の結晶の傍で廃都を見上げているライトニングを見つける。

その視線は、悲しげに虚空を睨み付けられていた。


「ライトニング。」

「……。」


返事をせずに視線だけウィッシュに投げつければ、一瞬目を丸くするウィッシュ。

そしてちらちらと視線を彷徨わせながら見てくるので、ライトニングはなんだ気持ち悪いと可愛げもない台詞を吐く。


「あー、その、なんだ。つけてくれてんだな。」

「……何を。」

「ネックレス。」


言われてライトニングはハッとする。

これをつけられたのがパージ前だったためかすっかりそのことを忘れていた。

バッと胸元を隠すように手を置けば、確かにその存在を知らせる異物感が手のひらに触った。


「にひひ、そっか、つけてくれてんのか。」


にやにやと笑うウィッシュに気持ち悪いともう一度吐いておいていくように歩き出す。

手のひらで押さえていたトップを今度は手のひらで遊ばせてみる。

つけているだけで、あんなに喜ぶものなのか、と緩む顔を引き締めながら思案してみた。

それだけであんなに喜ぶのなら、しばらくつけておいてもいいかもしれないな、なんて思ってしまう自分がいて。

ライトニグはは火照った頬を冷ますために湖のクリスタルで幾分涼しくなった道を駆け抜けた。

らしくもない。












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