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「これが、ファルシ……」


ホープの呟きは最もだとウィッシュは感じた。

なぜならファルシといっても、機械にまみれたものだった。


   これが、人が崇拝しているファルシ…。


ただの機械じゃないか。

いやガラクタと言ってもいい。

そんなものに必死になって懇願しているスノウにウィッシュは視線を送る。

話の通じる相手ならいいのだが、と不安に駆られながら。


「セラはクリスタルになった、あんたが命令した使命を果たしたんだ!だからもういいだろ!セラを元に戻してくれ!」


何も物申せず、ファルシに動きはない。沈黙を守り続けるファルシにスノウは膝を折って、頭を垂れた。


「頼む!セラを助けてくれ!代わりに俺がルシになってもいい!!」

「いいわけあるか、この大馬鹿雪んこめ。」


胸に手を当てていい思い付きだといわんばかりに言い放つスノウにウィッシュは痛まない左手でその頭を引っぱたいた。


「ウィッシュ…!」

「いいかファルシ、聴覚があるのなら良―く聞け。」


鋭く睨み付けたウィッシュの先には未だ反応を見せないファルシの姿が映し出されている。


「お前がセラちゃんに何をさせたかったのかは知らないが、お前らファルシ共の争いごとに俺ら人間を巻き込むんじゃない。俺らだって命があるんだ!お前がどうでもいいと思っている人間にだって命も、感情も、ちゃんと持っているんだ!」


吼えるウィッシュにファルシは当たり前だが無反応だ。

当然の結果といえば当然なのだが、そのことに酷くウィッシュをイライラさせた。

プレスターを構えたウィッシュに続いてライトニングも切りかかる。


「ライトニング!」

「義姉さん!」


大きく振り上げた武器はその硬い甲羅に弾かれてライトニングは体勢を崩した。


「こいつのせいでパージが起きて、人間同士の殺し合いだ…。セラはコクーンを守れといった。こいつを倒せってことだ!」


ライトニングの戦意に反応してか、はたまた違う理由でか。

今まで無反応だったファルシがいきなり動き出した。

その姿は電源を入れたように煌々と瞬きだす。

本当にどこかにスイッチでもあるんじゃないだろうかとウィッシュは確認したくなる。

動き出したファルシの両脇から出てきたのはファルシの触肢、そして眩い光とともに現れた下界ファルシ=アニマ。

その姿はなんとも形容しがたかった。

人型ではなく、本当に機械のような出で立ちだ。

「なぁ……、人がファルシに勝てると思うか!?」

「セラは私に言い残した。」


コクーンを、守ってと。それがこれを破壊することにつながるのだと、ライトニングも、スノウも、サッズも、ウィッシュもそう思った。


「ルシを見てみろよ、セラちゃんは人と何ら変わりはしなかった、その親玉だってそんな変わりしないかもよ?!」

「まるでチンピラの発想だな。」

「なんだとぅ!」


横から聞こえてきたライトニングの呟きに、ウィッシュは戦闘前だというのに突っ込まずにはいられない。


「つきあうぜ、素人が邪魔じゃなけりゃな。こいつの始末は俺のつとめだ。」

「悪いな。」

「デコイドールからライトニング、指示は任せる。」

「了解。」



戦闘開始の合図はない。


いち早く駆け出したのはスノウだった。

ファルシ=アニマに突っ込んでいったが、そのせいで開始直後凄まじい爆風を浴びてしまう。


「まず先に横の奴から片付けろ!」

「りょーかい!」

「サッズ、後方から狙い打て、ウィッシュは私のサポートに!あとそこの馬鹿は放っておいて構わない!」


ライトニングの無慈悲な言葉に一瞬ウィッシュとサッズの口元が引きつったが、当の本人はうぉりゃあ!とライトニングが切りかかった触肢と反対の触肢に殴りかかる。

それでいいのかとも思ったが、切り込むライトニングの後をウィッシュがプレスターで抉っていく。


「ウィッシュ!」

「まかせろ!そら、っよ!!」


プレスターを足場に、ライトニングは飛ぶ。

右を軸にしてライトニングを放り投げればジクジクとウィッシュの右肩が痛んだ。


「はあ!!!」


上空から振り下ろしたブレイブエッジ、それとともに触肢は消える。

それと同時にスノウとサッズが攻撃していた触肢も消えて、ファルシ=アニマは裸同然となった。


「一気に行くぞ!」

「はいよ!!」


駆け出すために出した足は、ほぼ同時。







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