キミに極限愛を捧ぐ | ナノ



2012アジマリ記念日コラボB


 激しい雨の音に混じって、シャワーを浴びる音がする。
その向こうにいるキミを、意識せずにはいられない。
よかったのかな。キミのやさしさに甘えて。
そうヤワではない。濡れて帰ったところで、風邪なんか引かなかっただろう。
きっとキミだってわかっている。
びしょぬれで帰ったところで、たいした問題ないってこと。
でも優しいキミは手を差し伸べて、引き止めてくれた。
その手を振り払うことは、できなかった。

雨はいっこうに降り止まない。
寧ろ激しさを増したようだ。
雷鳴が聞こえる。
こちらに近づいてきているようだ。

いつのまにか、シャワーの音が止んでいた。
ふわりとした香りが鼻腔をくすぐる。
忘れるわけのないキミの香り。
ああ。いつもよりずっと、濃厚で、くらくらしそうだ。
振り返れば、タオルを頭に深くかぶり、顔を隠すようにしたキミがいた。


「お風呂あがったから……」


思わずまじまじと見つめてしまったが、キミは顔をすぐさまそらしてしまった。


「きみも、入るなら入ってきたらいいよ。タオルとか、用意してあるから……僕、
もう寝るし」


そそくさとキミが部屋に戻ろうとした時。

閃光と、大きな雷鳴音。


「…………っ!」


ちいさな悲鳴をあげて、キミがボクに抱きついてきた。

抱きつかれる前に、一瞬見えた潤んだ瞳。
上昇した体温。
しっとりした肌。
上気した頬。
濡れた髪からただよう香り。

驚いて、しがみついてきたキミのすべてに、ボクはすっかり意識を奪われていた。

キミが抱きついてきたのは、あくまでも雷が怖かったからにすぎないのに。
安心させるために抱き返しながら、ボクはちっとも平常心でいられなかった。


「ご、ごめん。僕」




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