traveling!


 船に揺られることおよそ3時間。目的地に辿り着いた頃には陽が傾きかけていた。ここはハートランドシティからは遠く離れたとある島。船から降りるなり、その高い丘の上にある旅館を目指す。
 この場所はカイトが幼い頃、一度だけ父フェイカーにハルトと共に連れてきて貰ったことがある場所であった。静かで眺めが良く、旅行雑誌等に掲載されるほど有名ではないが知る人ぞ知る所謂穴場というところだ。もしミザエルとどこか旅行に行くならばここへ、とずっと考えていた。それがようやく叶ったことにカイトは潮風に吹かれながら小さく笑みを浮かべた。
 旅館は、豪華とは言い難いが造りに風情があり清潔感のある館内で、優しいオレンジ色の照明が暖かく出迎え、船旅で疲れた心身を癒す。宛がわれた部屋は伝統的とも言える和室であった。張り替えたばかりなのだろうか、新しい畳の香りが鼻腔を擽る。

「風呂に入るか、ミザエル。夕食までにはまだ時間がある」

「風呂か?いいぞ」

「では早速行こう」

 旅の疲れを癒すには風呂に限る。今から二人で入っておけば戻ってきた頃には食事の用意がされていることだろう。
 長時間の慣れない船旅で疲れの色を見せていたミザエルも喜色を顕に、うきうきと準備をし始めた。

 浴場は各部屋に一つずつ設えられており、洗い場から外に出たところに露天風呂がある。身体を洗い合った後、浴槽のある外への扉を開いた。

「うわ……外に風呂?」

 屋内の風呂にしか入ったことのないミザエルは外の景色を見ながら湯に浸かるのが相当新鮮らしく、初めての露天風呂というものに眼を輝かせていた。小躍りするような足取りで湯に浸かるミザエルの後に続き、カイトも浸かる。熱すぎず温くもなく、丁度いい湯加減だ。

「これは露天風呂と言ってな、外の景色を楽しみながら湯に浸かれるんだ。どうだ、気に入ったか?」

「ああ、とてもいいところだな!見ろカイト、星が見えるぞ」

「そうだ、綺麗だろう。明かりの多いハートランドシティではあまり見えないからな」

 頭上を見上げれば黄昏から宵闇へと移り行く美しいグラデーションが空にかかり、キラリと星が瞬いていた。その数はハートランドシティで見るよりもずっと多い。地上の光に紛れ普段見えない星も、見えないだけであって確かにそこに存在しているのだ。
 空を見上げるミザエルの瞳にはその星々が映り、まるで小さな宇宙がその中にあるようだとカイトは思った。

「あ…」

「どうした?」

「月も出ているぞ、カイト」

 小さく声を上げたミザエルに言われて空を見上げれば、まだそう高くない場所に白い月が見える。端はまだ闇に隠れていて満ちるには少し日が足りないようだ。

「ミザエル」

 ふとカイトが身動ぎ、湯が波打つ。自然と腕が彼女の肩に回る。ミザエルは動かず、カイトの動きに何も応えることはなかった。ただ月を眺めていた彼女が苦しそうに眉間の皺を深めたのをカイトは見てしまったのだ。
 どれ程の間であろうか。測るには短いが感じるには長いような空白であったかのように思う。一つ息を吐き何でもない、と小さく笑ってミザエルはカイトの方に視線を移し、甘えるような仕草で胸に頭を寄せた。
 その仕草に、プツ、とカイトの中の何かが弾けた。

「あっ……カイト…!?」

 肩に回した手を背中に移動させ、背骨に沿って指を這わせるとミザエルはビクリと身体を跳ねさせた。戸惑うような彼女の声と表情がカイトの心にある支配欲の器に熱を注いでいく。カイトの手は、最初は背骨に沿うだけであったが段々背中から腰へと撫でる範囲を広げていった。

「あん、んっ……カイト…」

「ミザエル…」

 カイトの堅牢な理性がついに限界を迎えた。久しぶりに触れるというだけでも耐え難い欲望に耐えていたのに裸の彼女を前にそれを耐え切るなど無理なことだったのだ。本当は風呂から出て夕食を食べ終わった後、ゆっくりとミザエルを抱こうと思っていた。しかし今、彼女を撫でる手の動きが止まる気配はない。
 カイトはミザエルの白い首筋に浮かぶ水滴を吸うようにそこへ口づけた。

「あっ、ん……あんっ…!」

「ミザエル…いいか」

 口づける合間に顔色を窺うと、困ったように目尻を下げながらもミザエルは小さく頷いてくれた。カイトの首に手を回しすがりつくような彼女の様子にうっすらと口元に笑みを作り、カイトは白い滑らかな肌を吸い続ける。更に唇を滑らせ、水面から浮き上がった、女性の身体にしては薄い胸を柔く撫でて中心で紅く色づく突起を口に含んだ。

「あん…やっ、はぁっ…!カイト……カイトぉ……!」

 片方の乳首を舌で転がす間、もう片方は指で軽く押し潰すように捏ねる。強く吸う度、背にある彼女の手に力が入るのを感じた。しきりにカイトを呼ぶ切ない声が胸の中に染み込み、愛しさとなって溢れ返る。衝動となっていくそれを止める術を、カイトは知らなかった。
 一通り乳首をねぶり終わった後、カイトはぐいっと彼女の身体を引き上げて浴槽の縁に座らせた。そして湯に浸かったままその脚の間に入り込み大きく開いて固定すると、中央に座する割れ目を指で広げる。薄紅色に光るそこは既に陰核が充血して勃起し、下の孔がカイトを誘うようにヒクヒクと蠢いている。

「あまり…見るな……」

 まじまじと秘処を開いて覗き込むカイトを見下ろすミザエルの肌がそこかしことのぼせたように紅くなっているのは、湯で体温が上がったせいだけではないだろう。それは羞恥を隠すように口元を手で覆う様子から見てとれた。しかしそこに拒絶の色はなく、カイトの行動を見守っているようにも見える。
 カイトは彼女の方に一度視線を向けると舌を出して秘処を一つ舐め上げた。

「んっ…あん、やっ…!あぁっ、あんんっ…!」

 ミザエルが湯を蹴る音とカイトが秘処から溢れる愛液を舐める音、二つの水音が耳に響く。それを掻き分けるようにミザエルの嬌声が届いた。彼女の声に背筋を震わせながら、温泉の味がするな、などと悠長なことを考える。
 カイトは充血してピクピク震える小さな陰核を舌でつつき転がしながら、愛液が溢れる彼女の孔に指を入れた。ゆっくりと二本の指を出し入れしながら指を曲げ、中の柔らかな部分を軽く叩く。久しぶりに触れるがまだ彼女のいいところは指が覚えてくれていたようだ。カイトの指が行き来する度ミザエルは啼き声をあげ、ひきつるような呼吸を繰り返した。

「カイトっ…あぁん…!そこっ…!んあぁ、やあっ、…!」

「ここ、がいいのか?」

「あぅ…あっ、そこっ…はぁうっ…!あ、あぁ!」

 既に開きっぱなしの口の端からは唾液が零れている。乱れつつある彼女の表情、そして震える身体にカイトの雄は欲望を持ち始める。今彼女を乱れさせているのは他でもない自分だ。普段高飛車で気丈な彼女を自分の指で快楽を与え支配している。もっと、乱れる姿を見たいーーそんな黒い欲望。

「ミザエル…っ、…気持ちいいか」

「あっ…あ、あぁんっ!きもちっ、…あっ!あ、あぁっ、!」

 段々とミザエルの声が間隔の短いものになり始めた。その様子を見てカイトは立ち上がってミザエルの腰を支えて一層激しい水音を立て、中を掻き回した。

「あ…イきそ……カイト…イきそうっ…」

「っ、イくか…?いいぞ…そのまま、イって…」

「あうっ!イっ…あ、イく…イくっ…!あぁっ!あぁん!あぁーーーっ!!!」

 力の籠った悲鳴と共にミザエルの身体が痙攣した。呼吸をして身体を浮かす度にビクビクと腰が震え、秘処から透明な液が浴槽の中へ噴水のように飛び散る。数回にそれを渡り飛ばした後、ぐったりとカイトに寄りかかった。

「もっ…もう、だめ……」

「久しぶりで、少しやりすぎたな。ゆっくり浸かるといい」

「カイト…カイトは?」

「俺か?」

 ミザエルの視線の先を辿ればそこには、すっかり熱を持ち欲望を具現したカイトの性器がある。じっと見られていることに少しばかり羞恥を感じ、カイトは思わず手で抑えた。その手の上から、彼女の手がそっと添えられる。

「私ばかり、その…きもちよくしてもらったから……カイト、私にもさせてほしい」

「俺はいい…我慢ができないわけではない。…無理はするな」

「私がしたいんだ…!」

 強い声と共に立ち上がったミザエルにグッと肩を押され、今度はカイトが浴槽の縁に座らされる。その隙をついてすかさず彼女はカイトの脚を広げてその間にしゃがみ込んだ。

「お…お前が、身体で払えと言ったのだろう!」

 昼間の冗談を引き合いにして言うほど、彼女には譲る気はないらしい。そこまで言うならカイトが折れるしかないだろう。無理はするなと再度念を押し、ミザエルの好きにさせることにした。

「は、んっ……ん…」

「っ、は……ミザエル、いいぞ……」

「カイト、んっ……きもち、いい…?」

「ああ…気持ちいい……ミザエル…根元、擦ってくれ…」

「こうか?」

「そう…ぅっ……」

 言われた通り根元を擦りながら、ミザエルは舌で亀頭を舐め、食むように唇で挟んだ。ビリッと背筋を震わせる快感にカイトは眼を閉じて空を仰ぐ。
 彼女の口淫は言ってしまえばそれほど上手いものではない。だが小さな口で性器を頬張り、時折「どうだ?」とでも言うように見上げてくる姿は扇情的で、それを見るだけでもカイトの性器は益々大きくなっていた。
 ミザエルが口淫をしてくれるなど、ましてや自分から言い出すことなど、そうそうないことなのだ。その事実だけでも欲望が高められる。

「アッ…ミザエル……んんっ…!もう、出るっ……!ぅっ…」

「出していいぞ」

「そういうわけにはっ、あぁっ…!お前に、かかってしまうだろう…!」

「問題ない。飲んでやる」

 先程カイトに達せられた時とは打って代わり、挑戦的な表情を見せるミザエル。自ら精液を飲むと言い出したことなど今までに一度もないことであった。虚を突かれたカイトが身動きをとる前に、ミザエルはガバリと深く咥え込んだ。 そのまま喉で締め付けられ、射精感が募る。顔を離そうと彼女の頭に手を置いたが寸分、遅かった。全身が解放感と快感に包まれ、カイトはミザエルの口内へと射精した。宣言通りカイトの精液を全て飲み干してしまったミザエルは目尻に涙を浮かべて咳き込んだ。

「うっ…ゲホ、ゲホッ…ぐ、ぅ……」

「だから言っただろう、無理をするなと…」

「無理など…していない……」

 カイトの股から顔を上げたミザエルは涙を拭ってくしゃりと破顔した。その顔を見れば彼女にとやかく言うべき言葉など瞬く間にどこかへ消え去ってしまう。ただ胸のうちに溢れるのは愛しさのみ。カイトもまた表情を崩し、彼女の腰を抱き寄せて深く口づけた。

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