01


あぁ、神様。神様なんか信じちゃいないけどあぁ、神様。いるなら教えてください。私がなにか悪い事をしましたか。そりゃ、スリとか殺人とか色々してますけどね。だからってこんな仕打ちないんじゃないですか。世の中には私より悪い人なんていっぱいいるんだから。

『私海賊になる気はない。』

「…。」

『ねぇ、聞いてます?殺戮武人のキラーさん。女の子に手錠なんて酷いんじゃないですかね。』

「違いない。でも海賊だ。手荒な事もする。それにキッドがお前を気に入ってしまった。俺にはどうすることもできない。船長命令だからな。大人しく仲間になった方がいいぞ。」

『どうしても?』

「ああ、手荒な事はされたくないだろ?」

『…。』

気に入ったから仲間にしたい人間に対してなんで手錠して閉じこめんだよ。まぁ、確かに逃げるが。この待遇はないんじゃないか。キッド海賊団に捕まり部屋に閉じ込められ手には手錠。見張りは殺戮武人のルーキー。私がそこそこ強い事を知ってこの人なのだろう。だからって監禁するか普通。海賊だもんなぁ、仕方ないのかな。もう面倒だ、と目を瞑る。

「…寝るのか?」

『まぁ、海楼石で力でないし。って事は逃げられないしなに?お話します?手荒な事でもします?』

「…いや、大人しければ危害は加えないが。男の前で寝るなんて無防備じゃないか。」

『じゃあやっぱり手荒な事を?』

「しないが、その一般的に考えてこの状況で寝るか普通。」

目を開けて目の前に座っている彼を見る。多分この船で二番目に強い彼。会った時から彼はクールで無口で知的なイメージがあった。だからこそそんな事いうなんていがいだ。私とお喋りしたいわけでも、そういう事したいわけでもないのだからほっとけばいいのに。

「…なんだ。」

『いや、顔は見えないけど不機嫌そうな顔してるだなぁ、と。貴方もそんな事言うんですね。』

「笑うな。年頃の女の子が海賊船で無防備に寝ていたら危ないぞ、って事だ。」

『なーんだ。貴方は襲ってくれないんですね。』

ニッコリ笑ってやればキラーさんはこっちを凝視してきたがシカトしてまた目を瞑る。すべてはここの船長が悪い、とはいえキラーさんにも少なからず怒りはある。少しくらいからかったってばちは当たらない。もう神も信じてないしね。

『キラーさんがそんな事するとは思いませんよ。』

「勘違いしてるようだが俺はいい奴でも偽善者でもないぞ。」

『ルーキーの海賊にそんな事思いませんよ。ただ、襲いたいなら私が眠る前だって襲えるじゃないですか。今現時点でこう会話ができてるなら大丈夫だと思っただけです。』

「違いない。だが安心するのはどうかと思う。俺は確かに襲う気はないがさっきから殺気も警戒心もといてるだろう。」

『能力使えない今ルーキー相手に戦おうなんて馬鹿な事は思ってないですよ。逃げた所でどうせ追っかけてきそうだし。それにキラーさんっていい人っぽいし、なんか。』

「さっきの話を聞いていたのか?俺はいい人でも偽善者でもないぞ。ルーキーで殺戮武人というの知っていて逃げ出さないなら俺がどういう人間かわかっているだろう?」

聞いていたけどなんだろうか。私を拉致ったここのバカ船長が子どもっぽいからか、キラーさんは大人っぽい。確かに戦いを好む性格みたいだし私にも切りかかってきた。けど今はそんな所微塵も感じさせてないし彼らは私を仲間にしたいのだ。だったら怪我なんかされたら足手まといだ。キラーさんは敵には好戦的だがそれ以外には普通だ。今の私は敵ではない、はず。それになんていうか、

『安心しますよね、キラーさんって。』

「…。この船に乗る気はないんだろう?」

『(あ、話そらした。戸惑ってるのかな)まぁ、ないですねぇ。私これでもまぁまぁ強いんで逃げますよ。』

「さっき能力つかえないしルーキーにはって言ってなかったか?」

『今はそうですけどチャンスならいつかありますよ。私が大人しく捕まってる訳ないじゃないですか。』

「それは普通密かに企むものじゃないか。だから手錠を、…眠いのか?」

逃げ回って疲れた。ずっと目をつぶって話していたからうとうとしてくる。キラーさんの声が遠くに感じる。本当によく走った。そういえば足も痛い。そういえばなんでこんな事になったんだっけ?あのバカっぽい奴がきて私、確か…。

-

「悪魔の名前!その首頂くぜ!!」

『…またですか。無理無理あんた弱そうだもん。』

「女一人が何言ってやがる!」

海軍を一人殴ってからなんだかんだかで賞金首になってしまった可哀想な私。だってあの海軍がよくない事をしていたんだよ。むかついたんだよ。なんて声は誰も聞いてくれず開き直ることにした。捕まるならこの際悪い事しても変わんねえだろ、とスリや殺人と悪事を働いていたらいつの間にか1億ピッタリの賞金首をつけられルーキー入り。わぁ、おめでとう私。嬉しくないけどね。

「海賊でもねぇ、男でもねぇ奴がこんな額は珍しいんだよ。」

「しかも悪魔の実の悪魔とは珍しい。オークションに売るのもいい。」

『珍獣扱いはうんざりなんだけど?まったく。悪魔の実だって食べる気なかったんだから。しかも悪魔の実の悪魔って本当に私って運がいいんだか悪いんだか。』

「俺たちにとっては運がいいぜ。そのおかげで高く売れるんだからな。」

『それ、私を捕まえてから言ったら?まぁ、便利だけどね能力って。』

確かに血を色んな形に変形させられるのも翼で飛ぶときも他の実と違って全身が動物になるのではなく羽だけ生えるのは楽だ。服は背中にジッパーをつけているから血を動かしおろすか常にあけっぱ。別にカナヅチになった所で対して支障もない。嬉しいがこの実のせいでヒューマンオークションからも目をつけられる始末。面倒事がただただ増えた。一人の女になんて事を、私の青春を返せよ、とそんな事を思っても敵は武器を構えて走ってくる。ボトルから血を出してさて、どうするかと考えた時だった。

『(水玉…、金髪、しかも長髪。仮面になんか回る武器。それ危なくない?あ、この人ルーキーだ。)』

「殺戮武人のキラー!!」

「うわぁああ!」

『そうそう。なんで上からきたんでってあれ、なんか倒しちゃった。あー、有難うございます?』

「…キッド。」

『(あ、私のお礼はシカト。ってかキッドって誰)…閣下。』

「あぁ?」

振り返ると閣下、いやキッドという奴がいた。確か仮面の人の船長だ。なんか皆個性豊かなクルーが集まった海賊団だったから覚えている。ロックバンドでもするんですか、これまじで海賊ですか、と疑った記憶がある。しかしこの殺戮武人が私の敵を倒してくれたがなにか理由があるのか。戦い好きだから倒しただけ、ってのがいいな。だが私の期待は空しく2人とも私をがん見している。

『…なにか用?海賊が用なんて珍しい。』

「お前が悪魔の名前か。」

『だったらなに。つか知らないで出しゃばった訳?』

「はっ、気が強ぇな。気に入ったぜ。」

『いや、意味分かんないし。会話をちゃんとしようか。私は今物凄いスピードであんたが嫌いになってるけど。私帰りたいから道開けてくれる?』

「おい、お前。」

『シカトですか。なんなんですか、人の話を聞こうか。』

「俺の船にのれ『却下!』簡単にはいかねえか。」

なんなのこの人。簡単に行く訳ねえだろ。というか会話がちゃんと成立しない人の船にのってどうコミュニケーションとるんですか。その顔と一緒で頭もおかしいんじゃないのか。そのメイクと服装一世代前にブームはすぎ去ったよ、と教えてあげたい。が面倒なのでさっさと逃げる事に。鶏頭と反対方向に歩こうとすると仮面の人がすっと出てきた。

『あぁ、そう。なにがなんでも私を仲間にしたいの。』

「あぁ、まぁな。嬉しいだろ。」

『あんたねぇ、今の会話のどこを聞いたらそうやってとらえられる訳?病院いった方がいいんじゃない。誰が好きこのんで海賊になんのよ。』

「俺達は好きで海賊になったんだ。」

『ええ、そうでしょうとも。あんた達頭おかしいもん。』

「お前も似たようなもんだろ。」

ニヤリと笑う閣下。なんだこいつ。ぶっ殺してもいいだろうか。どこをどうしたらお前と私が一緒なんだよ。海軍に追われててルーキーやってる所か?好きでなったじゃなんだよお前らと違って。海賊になるなら自分で立ち上げて船長になるわ。とりあえずこっから脱出しなきゃと殺気を放つと仮面の人が刃物を出してきた。面倒だ。物凄く面倒だ。

『私はねぇ、ムキムキと俺様と奇抜なファッションが嫌いなんだよ。』

「大人しくついてくれば危害は加えねえ。逃げれねえぜ。前に俺、後ろにキラー。ここから逃げても俺のクルーが待機してる。」

『なにあんたストーカー?女1人になにそこまでしてんの。なに飢えてんの?暇なの君達。』

「馬鹿言ってんじゃねえ、俺はモテる。」

『その女の子たちはお前と同じに頭が悪いかお金当てだよきっと。』

「お前あんまり調子乗ってると手荒くすんぞ。」

『うわー、逆ギレ最低ー。逃げ道がないなんて嘘だよ。左右が無理なら上下って手も忘れない事。』

「っ。」

地面を蹴って翼で空を飛ぶ。下の閣下があ、パンツ見えた、とかほざきやがったのが聞こえたのでいらっとした。まじあいつ殴りたいんだけど。でもあの細い道であの2人とやるのは得策じゃない。いつか殴る。

-

『ぶっ殺すっ。』

「…いきなり物騒な言葉で起きるな。」

『あ、仮面の人。じゃなくてキラーさん。いや、あなたじゃなくて閣下。』

「閣下?ああ、キッドか。そういえばそんな事言っていたな。よくわからないが。」

『あの後…、確か麻酔銃とか撃たれたような。本当珍獣扱い。』

「まぁ、すまない。」

『(…謝った。海賊が人を拉致って謝った。しかも命令した閣下じゃなくてキラーさん)なんかもう、大変そうですね。あんな船長で。尻拭いさせられてそうで。』

「でもいい奴だ。」

『海賊なのに?』

「俺らの基準だからな。」

ちょっと仮面の下で微笑んだ気がした。なんだか殺戮武人なんて言われてるけどこの人もいい人なのかな。最初シカトされていらっとしたけどあの船長よりましだ。

ちょっと気になる彼。
(とりあえず脱出だな)





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