正面の扉を入ると、一階二階をぶち抜いて出来た大きな作業場がある。工場が稼働していない今は機械類は撤収され、資材の入ったコンテナや木箱が放置されたままになっているらしい。
そこから通路で事務室や倉庫に進めるようになっており、更に先へ進めば裏口に繋がる。階段は通路に二つあり、作業場側に設置されているのが北階段、裏口側が南階段とされている。
リオンとセツナは、この南階段からそれぞれ二階と三階の様子を窺っていた。

『五分だ。その間に私と少尉で上を探ってくる。嬢はこの場で待機だ』

侵入は裏口からだった。瓦礫で埋まった出入り口には、敵も味方も用はない。そこからの侵入を警戒していなければ、この建物の造りからして至近距離に敵はいないだろう、というセツナの読み通りだった。
一応人の気配を確認してから、クライサが瓦礫が崩れないように固めてしまい、自分たちが通るための穴を空ける。錬金術師ならではの方法で建物内に侵入し、南階段に身を潜めてセツナが指示を出す。

錬成時の音や光でバレてしまった場合の対処も考えてはいたのだが、気配からしてその心配はなさそうだ。わざわざクライサをご指名しての報復なのだから、国家レベルの術師である彼女の錬金術は警戒して当たり前なのでは、と思うのだが……と言ったら、錬金術を正しく理解し警戒する者は、元よりこんな工場のようないつどこから攻められるかわからない場所でなく、屋外で時間指定した上で待ち構えるのだ、とそれを破ってきたクライサが教えてくれた。

『その後、私たちはそこの倉庫を攻める。君は作業場のほうで、思う存分暴れてくれ』

『りょーかい』

『敵と人質がいるのは、おそらくその二箇所だろう。気は抜くなよ』

『わかってる』

『誰に言ってんのさ』

以前の制圧の時に散々暴れたようで、リオンの散策する二階の廊下は壁や天井が崩れ落ちている箇所が多く見られた。扉が開きっぱなしだったり、室内側に倒れたままになっている部屋を一つ一つ覗くが、予想通り人の気配はない。
セツナが上っていった三階からも特に物音はしないので、上も同じ状況だろう。階段を下り、クライサと合流すると、同じようにセツナが下りてきた。

「あ、やっぱり上は空っぽだった?」

「ああ。やはり人質たちがいるのは作業場の可能性が高いな」

ならば、やることは当初の予定通り。正面から来る獲物を待ち構えている敵の中に、不意打ちでクライサが飛び込んでいく。リオンとセツナは倉庫のほうを片付けてから、クライサの助けに向かう。
口に出すことなく確認し、頷き合った三人は、クライサが両手を叩いたのを合図に駆け出した。







ミッション開始
(その時、すでに予感はしていたのに)








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