「お前ホント好きだよな、その話」

「まぁね。あたしの専門は錬金術だけど、こういうのも興味深いんだ」

呆れ果てたエドワードの言葉からすると、どうやらクライサがパラレルワールドなどの話をするのは珍しいことではないらしい。

「……ま、確かに有り得ない話ではないもんな」

「でしょ?例えばアンタがここにいない世界とか、元々こっちにいて軍人になったって世界だってあるかもしれない」

挙げれば可能性はいくらでもあるのだ。リオンに限らず、エドワードとアルフォンスが兄弟じゃない世界や、クライサが錬金術師じゃない世界だってあるかもしれない。
そもそも、リオンにとっては錬金術というもの自体がトンデモな存在なのだし、異世界だとかパラレルワールドだとか、ちょっとくらい不思議なものが実在していたところでどうということはないだろう。

「『ある』ことよりも、『ない』ことを説明するほうが、絶対的に難しいんだよ」

ショートケーキの最後の一欠片を口に押し込む少女に、紅茶を口にしながらそりゃそうだ、と同意する。彼女の研究者思考はひとまず落ち着きを取り戻したらしく、エドワードがまた溜め息をついた。

「ったく、街角のオシャレなカフェで何話してんだか」

「でもリオン、兄さんとクライサが錬金術の話をしだすともっとすごいんだよ。前にレストランから追い出されたことあるもん」

「へーそりゃすごい。是非ともご一緒してみたいね」

「心にもないこと言わないでよリオン」

噂に名高い天才国家錬金術師が二人もいれば、その議論はそれはそれは激しいものになるのだろう。一般人の自分など同席してもサッパリなのだろうし、その間で二人を止めきれずに困るのはアルフォンスだ。出来ることなら未来永劫ご一緒したくない。

「もー、そもそもリオンが小難しい話切り出したのがいけないんじゃん」

「あーそっか、最初はその話だったっけ」

「話が脱線していっちゃったんだね」

「ま、どうせ答え出ないだろうしもういいよ」







未解決の問題
(答え出なくても困らないし)







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