「そうだよねぇ…あたしらも異世界から来たなんて人、リオンぐらいしか知らないから、それがおかしいのかどうかもわからないしねー…」

世界を渡る際には普通、言語能力はそのままなのか否か。前例を知らないため何とも言えない。まあ、リオンとしては言葉が通じないという障害が増えなくて何よりなのだが。

「そもそも、リオンは異世界の人間なんかじゃなくて初めからこっちに住んでたって考えれば、辻褄も合うし手っ取り早いんだけど…」

「リオンの世界での思い出話、ボクらもたくさん聞いてるもんね」

「コイツにそれだけ頭捻った嘘を考える力があるとは思えないし」

「おい」

クライサのあまりの言い分に苦笑する。とはいえ、この友人たちやロイ以下司令室の面々は、誰一人としてリオンを嘘つき呼ばわりしないのだ。いや、嘘だろう、と言われたところで一応本当なんだけど、ぐらいしか返す言葉がないので文句も何もないのだが。果たして、嘘をつくような人間に見られていないらしいことを喜んでいいのか、わりとあっさり受け入れてくれた彼らの懐の広さを称賛するべきなのか。判定は微妙なところだ。

「っていうかさ、異世界から来たなんてやつの話、お前らもよく信じられるよな」

「自分で言ってて悲しくならない?」

「だって俺が逆の立場だったら、少なくともお前らほど受け入れ早くないと思うし」

「えぇ、そうかなぁ?リオンも結構順応早そうだけど」

「とりあえずリアクションは薄そうだよな」

「そもそも興味示さなさそう」

「馬鹿言え。一番近い病院への地図作ってやるぐらいには疑うぞ」

軍人や錬金術師なんてのは、一般人よりも現実的な思考を持っているものなんじゃないのか。リオンの考えは、向かいの席に座る少女によってあっさりと否定されてしまった。

「異世界やパラレルワールドってのはね、ファンタジー小説の専売特許ってわけじゃないの。科学の分野でもあるんだよ」

イチゴを刺したフォークを顔の前で立て、軽く横に振りながらクライサは言った。

「根底から何もかもが違う世界、なんてのはさすがにファンタジーだろうけどね、パラレルワールドに関してはそうも言えないわけよ」

「パラレルワールドって、よくあるあれだろ?自分や知り合いの性格や職業が違ったりとかそういうの」

「それも確かにあるけど、ほんの一部だね」

パラレルワールド。平行世界。元々は一つだった世界が、たくさんの『もしも』で枝分かれした、無限の世界。

「この世界とリオンのいた世界だって、その枝分かれしたもののひとつなのかもしれないんだよ」

この世界では日本という国が生まれず、アメストリスという国が生き残っているのかもしれない。リオンの世界ではアメストリスが滅び、日本が生まれたのかもしれない。
フォークについた生クリームを舐めとりながら上機嫌に言うクライサ。アルフォンスは楽しそうに話を聞いていたが、エドワードは呆れたふうに顔を歪めた。







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