「……なぁ、ゼロス」

「うん?どーしたロイドくん?」

「俺の見間違いかもしれないんだけど、」

「なになに?」

「幻覚かもしれないんだけど、」

「だからどーしたのよ」

「空から人が降ってきた」

「……はい?」

重力に逆らうことなく落ちてきた少女に慌てふためきながら、ゼロスが詠唱を始めると同時にロイドが駆け出す。
ヒールウィンド、という声を上げればロイドの周囲に風が巻き起こり、少女の身体がふわりと浮いた。落下速度を落とした彼女をしっかりと抱き止めて、漸く息を吐き出して。

「それで、クライサはどうして空から落っこちてきたんだ?」

近くの町で宿を借りて、暫くしてから少女は目覚めた。
彼女の名はクライサというらしい。空色をした長い髪と、同色のビー玉のように透き通った眼が印象的な少女。年齢はコレットと同じくらいだろうか。

「うーん……どうしてっていうか、気付いたら落ちてた」

自分は異世界から来たらしい。
そんなことを言い出す少女に、頭を悩ませるほかない。
彼女の住む世界はシルヴァラントでもテセアラでもない場所らしく、ここに来た理由(というか原因というか)もわからないそうだ。気付いたら、そこは空だった。もしロイドたちがいなかったら、どうなってしまっていたのやら。

「連れてってよ。あたし、ロイドたちと一緒に行きたい」

旅の目的を話してやれば、いささか困惑気味だった少女の顔が一気に晴れる。それが何を意味するかわからない一行は返答に困るが、ロイドとコレットのみ反応が違った。身寄りどころか知り合いもいない世界で一人ぼっちになんて出来ないと、連れて行こうと笑う。
結局彼らに反論する者は現れず、パーティは九人になった。

「それはいいんだけどよ、クライサちゃん、戦えんの?」

「こう見えて軍人ですから」

「え」

ロイド、ジーニアス、リフィル、しいな、リーガル、ゼロスの六名が固まる。
すごいねぇ、すごいです、とコレットとプレセアだけが笑ったり感心したりしているが、その二名の反応にはクライサが苦笑した。





生まれるのは、新たな響き



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