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ホテルへと戻るべく、ロイに別れを告げて歩くのは暗い夜道。
人気の無い、街灯と月の光だけが照らす道。
時計台の前を通りかかった時、そこに座り込む少年の姿を見つけて、少女は足を止めた。

「エド?」

「クライサ」







17.
sword of revenge

復讐の刃







エドワードはホークアイから、アルフォンスはノックスからイシュヴァールの話を聞いたそうだ。
それから合流した兄弟は、今クライサたちがそうしているように時計台の前に腰を下ろし、聞いた話について語った。
そして考え事をしたいと言うエドワードを残し、アルフォンスは先にホテルに帰ったらしい。

「アルとさ、元の身体に戻れた後、何がしたいかって話をしたんだ」

ロイが目的を果たしたその先も見ていることを知って、自分たちの将来のことを考えてみた。
そういえば、元の身体に戻ることばかりを目的としていたから、将来の夢なんて考えたことも無い。

「アルは、アップルパイが食いたいって」

「アップルパイ?」

「ああ。ウィンリィと約束してるんだ」

イズミの元を訪ねるため中央を発つ時に、グレイシアがアップルパイを作ってくれたのだ。
作り方を教わったから元の身体に戻ったらアルフォンスにも作ってやる、とウィンリィが言ったためにそういった願いになったのだろうが、なんとも可愛らしい夢だと笑えてきてしまう。
けれど、悪くない。

「エドは?将来どうしたい?」

「んー……元の身体に戻るっつー目的でいっぱいいっぱいだったからなぁ…」

アルフォンスと話した時もそうだったが、具体的に何をしたいかなんて思いつきもしない。
目先のことで精一杯で、その先のことを考える余裕など無かったのだ。
とりあえずリゼンブールやイズミの所に、戻った、と挨拶に行く。
そのぐらいしか、今はわからない。

クライサも同じだ。
レベッカから真実を聞き出し、エドワードたちの身体を取り戻した、その先のことは何も考えていない。
思いつくのは、ロイの目的の手助けをすることぐらいか。

「……将来か…」

ぼんやりと、遠くを見るような目をした少女に、エドワードは首を傾げた。
どうしたのかと尋ねると、彼女は少年をチラリと見て、しかしすぐに俯いてしまう。






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