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「思うんだ。あたしに、そんなこと考える資格があるのかなって」

人体錬成を行った時、五人の研究員を巻き込んで殺した自分に、将来の希望なんてものがあっていいのか。
目的を果たした後も、のうのうと生き続けていいのか。
生きるなら、死ぬことより辛い思いをし続けなければならないのではないか。

「あたしね、ずっと考えてたんだ」

エドワードは手足を、アルフォンスは全身を、クライサは涙を持って行かれた。
それは真理を見るための通行料であり、人体錬成そのものの代価ではない。

「キリーたち……あたしが殺した研究員たちは、その必要が無いのに命を落としたんじゃないかって」

エドワードが、目を見開いた。
クライサは両手を握り締め、肩と一緒に震わせている。

「他人の身体を通行料にするなんて、出来ないんじゃないかって思ったんだ」

それが可能なら、アルフォンス以上の通行料、五人分の命を差し出したクライサは、真理のかなり深いところまで見ていることになる。
しかし、彼女が見たのはエドワードと同じくらいか、それ以下だ。

「彼らはあたしの錬金術に巻き込まれて、真理の扉を通って、帰って来れなくなった。そう考えるほうが自然なんだよ」

扉の前に立った時も、扉の中を見た後も、『真理』は何も言わなかった。

(そう、何も言わなかったんだ)

彼らを通行料にしたとも、しなかったとも。
輪郭だけの姿に研究員たちの顔を見たのは、クライサ自身の頭がそうだと決め付けていたせいだったのかもしれない。
本当のことはわからない。

「どっちにしても、あたしは、許されないことをしたんだ」

もしかしたら、アルフォンスの身体と同様に扉の前で待っているかも、と思わなかったわけじゃない。
しかし、そうだとしても、あれから三年も経ったのだ。
エドワードたちとは違い、クライサと研究員たちはリンクしていないのだから、彼らは完全に飲まず食わずの状態。
今も生きているとは思えない。

「あたしの我儘に巻き込んで、その必要すら無い犠牲にして……あたしがキリーたちの立場だったら、いくら恨んでも足りないだろうなぁ」

そう言って苦笑したクライサの右手を、少年の生身の手が握った。










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