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「どうしてみんな、私の知らないところで居なくなっちゃうんだろう」
晴れた空の下、ヒューズの墓を前に、ウィンリィは言った。
小さなエリシアの手を握りつつ、グレイシアは少女の言葉を聞いている。
「私の父も母も、『すぐ帰って来るからいい子にして留守番してるんだよ』…ってイシュヴァールに行ってしまって、二度と帰って来なかったんです」
最後に見たのは、戦場に行く両親の大きな背中だった。
その背中が徐々に小さくなっていき、寂しくて泣いてしまったのだが、仕事に誇りを持って出て行くその後ろ姿を頼もしくも思ったのを覚えている。
「私、ヒューズさんに、自分の父親の背中を重ねていたのかもしれません」
墓地を出ると、グレイシアとの間に立つエリシアが手を伸ばしてくる。
嬉しそうな笑顔を浮かべる少女につられるように笑み、手を取り繋いだ。
「私が失って、もう二度と手に入らないもの。父と母と……その真ん中で笑ってる自分…」
ヒューズ、グレイシア、エリシアに自分のそれを重ねていた。
そこに家族のように迎え入れてもらえて、本当に嬉しかった。
懐かしく、幸せな気持ちを抱けた。
グレイシアが小さく笑う。
「うちは子だくさんね」
「え?」
「クライサちゃん。あの子も両親がいないから、あの人、色々と世話を焼いてね」
妹のように可愛がっていたロイに対し、ヒューズは娘のように世話を焼いていた。
彼女も、彼を父親のように慕っていたものだ。
「放っておけなかったのよね……クライサちゃんも、ウィンリィちゃんも」
お人好しで、世話焼きで、それでいて寂しがり屋だから
「……たまに会いに来てあげてね」
14.
girls in the field
戦場の少女たち
街に戻ると、人々の話し声からエドワードたちが暴れていることを知る。
グレイシアたちと別れ歩き出したウィンリィだったが、その耳に『国家錬金術師殺害犯』の言葉が届くと、不安に顔を歪ませた。
戦場に向かった両親の背中と、彼らの背中が、重なる。
「やだ……なんで重なるのよ……!!」
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