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「アンタは……っアンタは人の命を何だと思ってんだ!!」

両手の短剣の柄を強く握り締め、足の痛みを堪え走り出す。
向かう先ではレベッカが、白衣の中から取り出した二本のナイフを構えている。

「別に、何とも思っていないわ」

「あぐ…っ!!」

足の怪我のせいで思うように動けない。
避けることのかなわなかったナイフが右腹部と左肩に突き刺さり、クライサは耐えきれずその場に膝をついた。

レベッカが歩み寄ってくるのがわかる。
だが取り落とした短剣を拾う力は無く、彼女を見上げるのがやっとだ。

「あなたこそ、どうして彼らを死なせたことをいつまでも悔いているのかしら」

腕を組んでクライサを見下ろすレベッカに、それ以上彼女に攻撃をくわえる様子は見られない。
冷たい目で笑みを浮かべているだけだ。


「実の両親は、簡単に殺してのけたくせに」

「……え、」


耳を疑った。
信じられない言葉を、彼女は笑顔で吐き捨てたのだ。

両親を、殺した?

(あたしが?)


「うそ……両親は列車事故で亡くなったって…」

「そっちが嘘。本当はあなたが殺したのよ、二人ともね」

信じられなかった。
でも彼女の目に、嘘の色を見つけられない。

「それだけじゃないわ」

クライサがセントラル生まれだということも、両親が二人とも錬金術師だったということも、

「あなたと暮らしていた頃の優しい私も、全部、嘘」

彼女の手が頬に触れる。
その冷たさに身震いがした。

どうしてだろう。
彼女に触れるのは決して初めてではないのに、初めての感覚に嫌悪感しか生まれない。

「……今教えてあげられるのはここまでね」

冷たい手が頬を離れ、彼女はクライサに背を向ける。
そして部屋の出口に向け歩き出した。

「ちょっと待ってよ!まだ話はーー」

「言ったでしょう?今はここまで、よ」

振り返った彼女は綺麗な笑顔でニコリと笑う。
かと思えば、懐から取り出した何かを空中に放り投げた。








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