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国内最大の蔵書量を誇る国立中央図書館。
その西隣に位置するのが第一分館で、そこには様々な研究資料や過去の記録、各種名簿等が収められている。

しかし、つい先日、不審火によって中の蔵書ごと全焼してしまった。
彼らが目にしたのは、原形をとどめていない建物の焼け跡だった。

『ティム・マルコーの賢者の石に関する資料……やっぱり目録に載ってませんね』

本館のほうに問い合わせてみても、やはり希望の道は繋がる気配は無かった。
目録に載っていないということは、その資料は存在しないか、あっても先日の火災で焼失してしまったかのどちらかだ。
いずれにせよ、このままでは資料を手に入れることは不可能だ。
落胆の色を隠せない。

本館を後にしようとした時、以前第一分館で働いていたシェスカという女性を訪ねることを勧められた。
分館の蔵書に詳しい人なのかと問えば、詳しいと言うより文字通り『本の虫』だと返される。

呆れたように笑った彼女の言葉を疑問に思いながら、その女性の家を訪ねたのだが。

「留守ですかね?」

いくら戸を叩いてみても、一向に出てくる気配がない。
明かりがついているから外出しているということは無さそうだが。

鍵が開いていたので、失礼だとは思うがドアを開けてみた。
すると、中に足を踏み入れる前に視界に入ってきたのは、溢れんばかりの本の山。
アルフォンスの鎧ほどもある本の山が、所狭しと並んでいたのだ。

人が住んでいる環境には見えないが、とりあえず山の間を縫うようにして奥へと足を進め、シェスカの名を呼ぶと。
……まあ、結論から言うと、彼女はいたのだ。
崩してしまった本の山に埋もれて、生死の境を彷徨っていた(大袈裟に聞こえるだろうが、実際、クライサたちが訪ねなければ死んでいたかもしれない)。
本に埋もれて圧死、もしくは窒息死。
なんて笑えない。

眼鏡をかけたショートカットの女性、シェスカは、本が好き過ぎて分館での仕事を忘れて読書ばかりしていたため、クビになったという経歴を持つ(本が大好きだということは、家の中を見れば嫌でも伝わってくるが)。

正直不安で仕方なかったが、一応マルコー名義の研究書に心当たりはないか、問うてみた。









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