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西の空が朱色に染まり、涼しげな風の流れる夕どき独特の空気。

エドワードたちの母親が眠る墓の前に立ち、まるで彼女が生きてそこにいるかのように、クライサは挨拶の言葉を口にした。
その様子を、エドワードはただ、笑みを浮かべて見つめている。
墓石の前に置かれた、小さな花束。
二人の間を陣取るデンが、鼻を震わせてそれの匂いを嗅いでいた。

その後、真っ直ぐにロックベル家に戻ることをせず、向かったのは

「……ここが、」

彼らの家があった場所。
焼けた木と、塀の名残が点在するだけの草原と化したそこに、エドワードとアルフォンスの育った家があったのだ。

三年前、エドワードが国家資格を取得し、旅立った日。
自分の家を、彼らは跡形もなく焼いてしまった。

帰る家を失くすことで、後戻り出来なくなるようにしたのだろう。
生半可でない覚悟が、こちらにまで伝わってくる。
兄弟の過去を聞いた時に家を焼いたという話もされていたが、こうして実際に目にして、改めて彼の意志の強さを理解した。

失う前の家の形を思い出しているのか、その場から動かない少年の横顔には、どうも声をかけ難い。
彼の服の裾を掴み引っ張ると、こちらを向いてくれたエドワードと目が合った。
一瞬驚きに目を丸くしていたが、すぐにその表情は苦笑に変わり、彼を纏う空気も普段のものに戻る。

「……帰るか」

「……うん」











そして三日の時が過ぎ、エドワードの右肩の先にはゴツイ機械鎧。
アルフォンスの鎧も元通りの形に戻して、彼らが早速行ったのは、兄弟間で恒例の組み手だった。

手足の作動確認も兼ねて、そしてここ暫く身体を動かしていなかったためカンを取り戻す目的で始めたそれだったが、協力すると申し出たアームストロングの乱入により、彼らのいる庭はいっそう騒がしくなる。
ベランダでそれを見下ろしていたウィンリィは呆れた溜め息をつき、その隣でクライサが苦笑した。









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