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「……う…」
エドワードは全身の痛みで目を覚ました。
地上に出た直後、前方から放たれた攻撃に飲まれたことは理解出来る。
それを防ぐことも避けることも出来なかった、ということも。
「…!!クライサ!!」
痛む体を起こそうとした時、初めて自身の上に倒れている少女に気付いて目を瞠った。
「クライサ!クライサ!!」
「……だいじょぶ、聞こえてる」
エドワードを守るようにしてうつ伏せていた少女を、彼は慌てて抱き起こした。
辛うじて繋がっているという状態のボロボロの機械鎧と、傷だらけになった左手でクライサの肩を掴めば、弱々しくはあるが確かに声が返ってくる。
「よかった…とりあえず、生きてる…ね」
クライサは攻撃を受けたあの瞬間、とっさに賢者の石を使って瞬間的に防御を張ったのだ。
それは攻撃を防げはしなかったものの、多少は和らげることに成功して確かに彼らの命を救った。
エドワードの前に出たために彼より多くの傷を負って、血塗れになりながらもクライサは微笑む。
それから辺りを見回せば、瓦礫の山と土煙の中に、ボロボロのアルフォンスにすがりつくメイ、そして血だらけで倒れるイズミの姿を見つけた。
気を失っている様子のイズミに駆け寄り、師匠と、あるいはその名を呼べば、彼女は苦痛そうに身を起こす。
「…生きてるよ…。ホーエンハイムさんが…ギリギリ…守ってくれた…」
その名に、エドワードとクライサは視線を横へと向ける。
そこに、彼の姿はあった。
「ホーエンハイム!!」
両腕を広げ、膝をついた姿で、まるで固まっているようだった。
イズミを守るために晒した背中は酷く灼け、俯きがちの顔には錬成痕のようなものが表れている。
「ホーさん!!」
「おい、しっかりしろ!!お…」
彼に駆け寄ったその時、ホーエンハイムの背後に現れた『フラスコの中の小人』の姿にエドワードは言葉を切った。
彼はホーエンハイムの頭を鷲掴みにすると、そのまま勢い良く真横に投げる。
地面に叩きつけられた彼を案じる暇もなく、エドワードらは自身の身体に異変を感じた。
『まず、みっつ』
魂を絞り出されるような、激しい苦しみにエドワード、クライサ、イズミは胸を押さえた。
このままでは、賢者の石として彼に取り込まれてしまう。
「撃てぇ!!!」
しかし、その声が彼らの危機を救った。
弾丸が『フラスコの中の小人』を襲い、彼はそれを防ぐためにそちらに意識を向ける。
解放されたエドワードらが大きく息を吐くなり、先の銃弾に続く砲撃が降り注いだ。
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