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「このエンヴィーが、お前みたいなガキに……っ」

腸が煮えくり返る思いを抱きながらも、エンヴィーは逃げる以外の選択肢を持たなかった。
狭い通路から次々に巨大な棘やら刃物やらが錬成され、息を継ぐ間もなく襲いかかってくるのだ。
足を止めては瞬く間に追い詰められてしまうだろう。

前方からやって来る人形兵を吸収しつつ、反撃しようと振り返るも、既に迫っていた氷の針に眼球を貫かれて激痛に転げ回る。
その間に追いついたクライサが壁から錬成した剣を振り上げると、腕を伸ばしてそれを弾き飛ばし、追撃を避けるように後ろへ飛んだ。
クライサが溜め息をつく。

「しぶといなぁ。そろそろ死んでくれてもいいのにさ」

「そう簡単には死んでやらない…よ!」

彼女の手に武器は無し。
すぐに錬成を行える体勢ではないと見て、目の回復を待ったエンヴィーが飛ぶ。
身体のサイズに比例しない体重でのしかかってやろうと、勢い良く着地するが、クライサは軽くそれをかわした。
だが、

「うえっ!?やべっ…」

「え、ちょっと待っ…」

衝撃に耐えかねた床が破れ、破壊された周辺の床ごとクライサとエンヴィーは宙に投げ出された。
張り巡らされたパイプも突き破って階下に落ちる途中、クライサは開いていた扉の上部に掴まるというか引っかかるというかぶち当たるという形で床まで落ちることは避けられたが、エンヴィーはしっかり床まで落下したらしい。

「…ったー……」

主にぶち当たった胸から腹にかけて。

「クライサ!?」

「あれ……エド?」

クライサが自分を呼ぶ声に振り返りつつそこから飛び下りると、無数の人形兵が倒れる大部屋の中に、見慣れた人物が揃っていることを確認した。
地下に入ってから行動を別にしていたエドワードとスカー、合成獣三人組、彼らと合流したらしいメイ。
そしてーー

「あ、お兄ちゃん久しぶり」

「やあ、クライサ。相変わらずやたらと元気そうだね」

「うん、あたしはいつもむやみに元気だよ」

暫くぶりに会う兄、ロイを見つけて緩い再会の挨拶を告げた。
その後ろにホークアイの姿を確認して手を振ると、優しい微笑みが返ってくる。

「……って君!怪我してるじゃないか!」

「あー、手?大丈夫だよ、簡単に手当てはしてある」

壁を殴ったりしたせいでボロボロになった手を鋭く見咎められて溜め息をつく。
戦闘に支障が出ては困るからと、包帯を巻いたり一応は処置してあるから本人的には問題ないのだが、兄の表情は変わらない。
クライサは苦笑するが、久しぶりに彼らしいところを見られた気がして少し嬉しかった。








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