赤星は廻る | ナノ



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ヨームゲンに届けることにした『澄明の刻晶』を持ってフィエルティア号に戻れば、不思議なことに、あれだけ反応のなかった駆動魔導器がすっかり直っていた(レイヴンなどは呪いが解けたなどと軽口を叩いていたが、リタが本気で嫌がるので調子に乗ることはしなかったようだ)。

それから船はアーセルム号を離れ、漸く辿り着いたノードポリカの夜空には色とりどりの花火が打ち上がっている。
ノードポリカの別名は、闘技場都市。闘技場は現在、ギルド『戦士の殿堂』が運営権を持っており、市民の娯楽の場となっている。この街は毎日がお祭り騒ぎと言って過言ではないだろう。

「あ、こ、これはカウフマンさん、い、いつも、お、お世話になって、い、います」

船を港に停め、街に入った一行の前に現れたのは、探検家風の作業服に身を包んだ男だった。その挙動不審さにユーリらは眉を顰めるが、カウフマンは慣れた様子で笑みを返す。

「またどこかの遺跡発掘?首領自ら赴くなんて、いつもながら感心するわ」

「い、遺跡発掘は、わ、私の生き甲斐、ですから」

誰、と呟いたのはリタ。それにアカが返す。彼はギルド『遺構の門(ルーインズゲート)』の首領、ラーギィだ。

「『遺構の門』?何か覚えある…」

「そりゃそうさ。帝国魔導士の遺跡発掘を手伝ってるギルドだからね」

「ああ、それで聞いたことあるのか」

カウフマンに挨拶をするためだけに顔を見せたのだろう、ラーギィは仲間を待たせているからとその場を去った。それを見送る一行の後ろで、リタは一つの可能性を見いだす。思い出したのは兵装魔導器を売っているギルドの話だ。

「ねぇ、『海凶の爪』に魔導器の横流ししてんの、あいつらじゃない?」

「『遺構の門』は完全に白よ」

「なんでそう言い切れるんだ?」

しかしその可能性をカウフマンは即座に否定した。ユーリの当然の疑問にレイヴンが答える。『遺構の門』は、温厚で、まじめに、こつこつと、それが売りのギルドなのだ。それを受けて、リタはまた考え込む。

「じゃ、もう行くわね。フィエルティア号、大事に使ってあげて」

「ああ」

「『凛々の明星』、がんばってね」

「はい!」

カウフマンが立ち去ると、次いでパティが歩き出した。彼女には彼女のやることがある。カロルが操船の礼を言うと、パティは笑って頷き、街の中へと駆けていった。

「んじゃ、こっちはこっちの仕事してきますかね」

「手紙、届けるのよね?ベリウスに」

「そそ」

「ボクたちも行ってみようよ」

「そうだな。フェローのこと、なんか知ってそうだしな。挨拶がてら、おっさんをダシに会ってみようぜ」





いざ、闘技場へ!



SKIT
傭兵の利点





 


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