赤星は廻る | ナノ



02

 



「じゃあエステルは、そのフレンって騎士を追ってるんだね?」

騎士に追われ、下町の住人に見送られるようにして帝都の結界を出たユーリらと共に歩いて暫く。エステル(ユーリがエステリーゼに付けたあだ名だ)から簡単な事情を聞いたアカが首を傾げ、相手はそれに頷いた。

「はい。フレンは騎士の巡礼に行っている筈なので、まずハルルの街に向かおうと思ってるんです」

フレンというのは帝国騎士団の小隊長で、ユーリの古い友人でもある。エステルは彼の身に危険が迫っているのを知らせたくて、ユーリに頼んで城から連れ出してもらったのだそうだ。

「で、ユーリくんは魔核泥棒を追っかけてる、と」

「ああ」

次いで、前方を歩く青年に目を向けた。その右隣につくのは彼の飼い犬である青い毛の隻眼の犬、ラピードだ。煙管をくわえて悠然と歩く姿には威厳が感じられる。犬だが。

「水道魔導器があのままじゃ、下町の連中はまともな生活出来ないからな。モルディオの奴を追う」

牢屋で会った、脱獄の手助けをしてくれた(と言うかぶっちゃけ牢の鍵をくれた)男の話では、モルディオというのは学術都市アスピオの天才魔導士らしい。ユーリはその情報を元に、魔核を取り返しに行くそうだ。

「アカはどこに行くんです?」

「ん?うちは別に。今は仕事も無いし、テキトーに君たちについて行くよ」

面白そうだし、と笑うとユーリが肩を竦めた。エステルは仕事?と首を傾げている。

「うちは傭兵なんよ。今日帝都に行ったのも、行商人の護衛っつー仕事があったからだし」

「傭兵……」

「見えないだろう?」

「……正直」

この世界のほとんどの街には巨大な結界魔導器(シルトブラスティア)が置かれているため、結界の中で暮らす者たちの安全が魔物に脅かされることはほとんど無いが、結界を出るとなるとそうはいかない。結界の外では多種多様な魔物が暮らしているのだ。
戦闘に慣れない者が単身で結界の外を行くのは難しい。そういった時、護衛を請け負うのがアカの仕事だ。

「だから一緒に行っていいかい?腕には自信あるから、十分戦力になると思うんだが」

「もちろんです!改めて、よろしくお願いしますね」

「ま、いいんじゃないか?」

「ワン!」

「ありがとさん。暫くの間、よろしくね」

エステルの満面の笑顔、肩を竦めるようにしたユーリの言葉、ラピードの歓迎するような声に、アカはニコリと微笑む。なかなか面白い旅になりそうだ。

「……しかし、モルディオか」

「どうした?」

「いんや、何でもない」





多分、言ってもしょうがない



SKIT
戦闘の心得





 


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