18 裏口のほうにあった昇降機に乗り、忍び込んだ先は暗い地下室。人骨らしきものが転がり、魔物が徘徊するそこにレイヴンの姿は無かった。どうやら彼はもう一方の昇降機で上の階に向かったらしい。逃がしたか。 襲いかかる魔物を蹴散らしていくと、二重の鉄格子が設置された部屋に出た。見せ物を観察するためのものだろう。 「とんだ趣味をお持ちなんですねぇ、執政官様は」 格子の向こうに現れた老人の姿に、アカが冗談混じりに言い、ユーリが舌打ちした。 皇帝の代理人とも呼ばれる評議会の一員、ラゴウ。小綺麗な服装をしているが、腹の中は真っ黒だ。続く会話に嫌気がさして、青年は左手に握った剣を振る。生まれた衝撃波が格子を破壊し、血の気を引かせたラゴウは警備を呼びながら上階に逃げていった。 「さっさと証拠を見つけて有事を済ませないと、邪魔者が出てくるぜ」 「んじゃ、ちゃちゃっと探しますか。天候を操る魔導器ってやつを」 ラゴウを追うように階段を駆け上がり、件の魔導器を探して広い屋敷内を駆け回って暫く。また同じような部屋に出たと文句を言おうとした一同は、部屋の中心で天井から吊るされている少女を見つけて言葉を失った。先程ユーリとアカが屋敷の前で会った少女が、布団のようなものにくるまれてブラブラ揺れている。なんだあれ。 「……何やってんだ?」 「高見の見物なのじゃ!」 「へー、オレはてっきり捕まってんのかと思ったよ」 「多分捕まってるんだと思うよ…」 スルーして先に進んでしまいそうなユーリにカロルが言う。とりあえず下ろしてやり、こんなところで何をしているのかと尋ねれば、パティ・フルールと名乗った少女は年齢にそぐわない態度で宝探しだと返した。彼女が探しているのは単なる宝ではなく、大海賊アイフリードの隠した宝らしい。 「あー、確かにあの道楽腹黒ジジイなら、そういうお宝の一つや二つ、がめててもおかしかないね」 「でも一人でこんなところにいたら危ないよ」 「うちは冒険家だからの。宝探しのためならどんな危険も乗り越えて行くのじゃ!」 「捕まってた奴の台詞じゃねぇだろ」 子どもをこんな場所に置いてはいけないからと、屋敷を出るまでは行動を共にすることにして。更に進んだ先の部屋に、建物二階分はありそうな大きな魔導器があった。魔核の前で制御盤を開き、ぶつぶつ呟いているリタの姿を見ると、これが目的のもので間違いないようだ。 さて、あとは『有事』を起こすのみ。屋敷を破壊せんばかりに暴れ回る彼らに、怒りを抑えきれないラゴウが怒鳴り声を上げる。人の屋敷でなんたる暴挙。確かにそうだ。彼に命じられて武器を持った傭兵たちに対しながら、カロルはアカを振り返った。 「アカ!こいつらって、まさか」 「ああ」 ここに来るまでに退けた者たちも、ラゴウによって雇われたギルドの人間らしかった。そしてカロルやアカにはそのギルドの名に予想がついている。『紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』だ。 ああ、やっぱりか SKIT ┗アイフリード? ×
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