小説 | ナノ
※一応コチラの続き。読まなくても内容は分かるようになっています。
柄にもなく、バレンタインデーなんて消えてしまえと馬鹿なことを思うくらい嫌いだった。
ああもう忌まわしい。
でも、今年は昨年までと違った。
初めて貰って嬉しいと思ったのは高尾がくれた何とも形容しがたい歪なチョコレートで、見た目まあまあ、味もまあまあ。
緑間の中で高尾は何でも器用に熟(こな)す人でチョコレートを見たときは驚いた。人間関係においても、勉強においても、バスケにおいても、苦手なんて無いんじゃないかと思い込んでいた緑間は、高尾にも苦手があることに少し安心もした。
いやでもきっと今隣を歩く高尾は次に作る時はそこら辺の女子より上等な出来のチョコレートを持ってくるんだろうなあ、と半ば感心する。
「高尾、ホワイトデーは何がほしい」
ホワイトデーは明日だから今から用意出来るものになってしまうが、
と付け加える。
高尾は真ちゃんから何か貰えるなんて感激、なんて本当に嬉しそうに言うもんだから、緑間は少し申し訳なくなる。
高尾の直接的な好意の言葉を緑間は素直に言えない。どんなに惹かれ合った2人でも、どんなに行為を重ねた2人でも結局、愛は言葉で表さなければ伝わらないし不安になる。それは当たり前だ。
高尾は『誕生日おめでとう』すらろくに言えない言葉足らずな緑間に不満も不安も抱いているはずだ。
「何もいらねーよ?あのチョコは俺の自己満だし」
「しかし……」
こんなときだけ無駄に謙虚な高尾に緑間は困り果てる。
「強いて言うなら真ちゃんの愛がほしいのだよ!」
「……マネをするな」
高尾はきっと本気で言っていて、これはきっと高尾から俺への問題提起。
緑間はそう解釈する。
愛という何とも漠然としたものを、どんな形で表現して良いのやら、形、言葉、探し出せばキリがない。
緑間の答えはすぐに出た。
ああ、きっと高尾はこれを望んでる。
「くれんのは今でも良いぜ?」
「…いや、明日にしよう」
*130314
高尾100%様に提出
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