「おっはよ、二人とも!」
「もう出発か?」
「まぁね」
次の日、ポケモンセンターで朝ごはんタイムをしていると大きな肩掛け鞄を持ったルエノとメリープが意気揚々と歩いてきた。見る限りもう出発するみたいだ。
隣にいたルーは、ジム戦後のルエノと女子トークで盛り上がったらしくもう仲良しになっていて、少し寂しそうだった。
「ルエノ…行っちゃうの…?」
食べかけのパンを皿においてルエノに駆け寄るとそっと袖を引っ張るルーに、ルエノは嬉しそうにルーの頭を撫でていた。
「うん、私には私のやることがあるからね。二人はジム巡りじゃないんでしょ?きっとそのうちまた会えるわよ、私ジムがある街は大抵行かなきゃだし」
「俺たちも色々見て回るし、案外すぐに会えるかもな」
「うん…また、会う」
まるで姉妹みたいだ。ゴースもルエノは気に入っているのか、二人の周りをぐるぐる回っている。
ふとブビィを見ると、メリープのほうに走っていって自分が食べていたきのみを半分差し出していた。メリープはにっこり笑って一鳴きすると、差し出されたきのみを美味しそうに頬張る。ここもどうやら仲良しのようだ。
「それじゃ、またね!リオ、ルー!行くわよメリープっ」
「メーっ」
俺たちに手を振り、センターから出て行ったルエノとメリープ。色んなトレーナーが旅をしてるけど、あんな活き活きした目を引くコンビはなかなかいない。俺は絶対に再会できる、そうどこかで確信して見送っていた。
席に戻ってきたルーは、食べかけのパンを頬張っていた。
「俺たちの次の目的地はヒワダタウンだな」
「ヒワダ、タウン…」
椅子に置いていたガイドブックを手に取り、ぱらぱらとページを捲るルー。すぐにヒワダのページを発見できたようでいつものように食い入るように見る。
「…ねぇ、リオ。ロケット団…って、何…?」
「あぁ…ヒワダだから載ってたか。えーと…最初に出てきたのは、五年前。ここジョウトじゃなくて、隣のカントー地方で、悪さをしていたんだ」
「悪さ…」
「でも、今じゃ伝説と言われるレッドっていうトレーナーに壊滅させられて解散。なのにその三年後、ここジョウトでまた悪さを始めたんだ。それが今から二年前…」
俺も凄く詳しいことは知らない、当時はまだ幼くて話されても理解できなかったと思う。でもスクールで先生から軽く話を聞いたときは、本当に腹が立って仕方がなかったんだ。ポケモンを道具みたいに使って、悪いことをして…絶対許せない奴らだ。
「色々してたみたいだけど、結局俺と同郷のヒビキとコトネっていう、二人のトレーナーにこてんぱんにやられて今じゃすっかり姿を見なくなったんだ」
「そう、なんだ…」
「ヒワダのページにロケット団が載ってるのは、ヤドンの井戸ってとこで悪さしてたからだな」
ルーはぱたんとガイドブックを閉じると、飲み物を飲んで一息ついた。そしてゴースの頭を撫でて俺を見る。
「リオが許せないタイプ、だね」
「まぁな!何もしてないポケモンを傷つける奴は大ッ嫌いだ!」
「ブービ!」
ブビィが俺の言葉に同意するように飛び跳ねた。俺は立ち上がって思いっきり背伸びをする。そして鞄を掴んで、窓の外を見た。
「よっしゃ、俺たちもそろそろ行こうぜ、ルー。今日も晴天だ!」
「…うんっ」
外に出ればさんさんと降り注ぐ太陽の光。気持ちのいい朝だ!センターからは俺たちと同様に旅支度が整ったトレーナーたちが朝日の中歩き出す。いつものようにブビィが前を歩き出した。
「まずは、32番道路に出るぜ!」






「勝負、お願いします!」
「こちらこそ!」
32番道路でキキョウから来たであろう、とりつかいとのバトルが始まった。相手のポッポが空を舞い、俺のブビィが地上から応戦する。急降下してきたポッポのたいあたりにブビィは体勢を崩すがすぐに持ち直して口からひのこを勢い良く吐き出した。
「いいぞブビィ!」
バトルする俺たちから少し離れたところで、ルーは見ていた。勝負を仕掛けられたとき前のことを思い出してルーを見てみれば、あんなに戦わせまいとしていたのが嘘のように俺を見てニコニコしていた。きっとルーはルーなりに、『バトル』というものを考え直してくれたんだろう。ルエノのおかげだな、きっと。
ポッポを戦闘不能にすれば、とりつかいは次のボールを出した。次に相手が繰り出したのはオニスズメだった。
「ブビィ、油断するなよ!」
「ブー!」
やる気マンマンな俺の相棒は口から煙を噴出し相手を睨み付ける。オニスズメはポッポと同様、空に飛ぶと翼を勢い良く羽ばたかせた。
「オニスズメ、つばめがえし!」
とりつかいが叫んだ瞬間、オニスズメは素早くブビィの頭上を飛び回り始めた。その動きにどんどん目を回していく。
「ブビィッ!」
「今だ!」
ふらついたブビィの背後をとったオニスズメはするどくした羽でブビィに切りかかり、もろに食らってしまったブビィは吹き飛んで倒れる。
しかし俺のブビィはタフな奴で、辛そうだがなんとか立ち上がってくれた。
「ブビィ!頑張ってくれ!」
そう声をかければ、ブビィが頷いたように見えた。そしてまた空に飛んだオニスズメを見上げたかと思うと突然口に炎を溜め始めて、俺は思わずきょとんとする。
けど、きっと何か考えがあるんだろう。
「思いっきりやれ!」
「ブビィーッ!!」
俺がそう言った瞬間、溜めに溜めた炎を空のオニスズメ目掛けて一気に噴射させたブビィ。その炎はうずを巻いて、上空のオニスズメを巻き込んで立ち上った。
炎が消えたと思ったら、丸焦げになったオニスズメが戦闘不能状態で落ちてきた。
「す、すげぇ!なんだよ今の技、お前いつのまにそんなもの覚えてたんだ!?」
「ブーっ」
走って戻ってきたブビィとハイタッチして頭を撫でてやれば、どうだと言わんばかりの偉そうな顔で見上げてきた。
オニスズメをボールに戻したとりつかいがこっちに来たから、俺は立ち上がって手を差し出した。
「面白いバトル、ありがとな!」
「こちらこそ!君のブビィは強いね!」
ぎゅっと握手を交わしてバトルを振り返る。お互いでバトルの意見を述べ合うのも、俺は好きだった。
少し話してトレーナーと別れる。振り向けばルーがブビィにきずぐすりを塗っていた。
「凄かった、ブビィ」
「ホントにな、俺もビックリしたぜ!こいつも強くなってるんだなぁ」
当たり前だ!と見上げてきたブビィに笑って、鞄からきのみを出してやる。うまそうにそれを食べるブビィを見てると、俺まで嬉しくなってきて笑顔が絶えない。きずぐすりときのみですっかり回復したブビィを見て、俺はルーに預けていたリュックを背負う。
「行くか!」
「うん、………?」
歩き出そうとしていたとき、ルーが突然別の方向を見て立ち止まった。何事かとそちらを見れば、細い道があった。
「そっちはヒワダじゃないぜ」
「……」
興味があるのかガイドブックを抱きしめたまま動こうとしないルー。ブビィが早く行こうとルーの服を引っ張っていたからやめさせる。
「リオ…」
「うーん…まぁ、急ぎじゃないしな…わかった」
俺が頷くと余程行きたかったのか、ルーはゴースと一緒に早歩きで細い道を歩き出した。ブビィと顔を見合わせて笑うと、その後に続く。
木と木の間の道を奥に歩いていくと、そこにあったのはたくさんの洞窟らしきものと一つの建物だった。
「ここは…」
「…いせ、き」
ルーがガイドブックを開いて俺に見せてくれた。どうやらここは『アルフの遺跡』という場所らしい。俺たちが本を見ていると、建物から一人の男性が出てきた。
「あれ、君たちは…旅行者かな?」
俺たちに気付くと歩み寄ってきた男性は、眼鏡をかけて白衣を着ている容姿から研究員みたいだ。どうやらルーが持っている旅行ガイドブックを見てそう思ったみたいだな。
「トレーナーです、まぁ旅してるからそんな感じだけど」
「そうかそうか、遺跡に興味があるのかい?」
「興味、というか…」
「ある」
ルーがすぱっと即答した。それに研究員は嬉しそうに「そうかそうか!」と頷いてから建物を指差した。
「なら、詳しい話は研究所でしよう!」
珍しいことにルーとゴースがほいほい他人についていってしまった。取り残された俺とブビィはぽかんとしていたが、慌てて後を追いかける。
研究所の中に入ると、見たことのない石版やら文献がたくさん飾ってあった。机の上も難しそうな本ばかりで、俺は思わず頭に手を当てる。
「頭痛くなりそうだ…」
「僕はロジー、ここで遺跡の研究をしてるんだ!」
自己紹介をし始めたロジーという男を無視して、ルーは壁にかけられた石版をがん見していた。いつものことなので俺は苦笑いだけど、ロジーはどうなんだろうか。研究者は変わり者が多そうというイメージがあったけど、やっぱりロジーも変わり者みたいでルーの隣に行き一緒に石版を見上げた。スルーされたことはどうでもいいみたいだ。
「このポケモンを知っているかい?」
文字のような姿をしたポケモンが、石版にたくさん描かれていた。
「俺はまったく…」
ルーも首を横に振った。ロジーは「そうだろうね!」と自信気に返してきた。知らないと思っていたなら聞かなきゃいいのに、と思いつつ、何かを取り出すロジーを見る。
分厚い一冊の本を机に出したロジーがページをめくると、石版に描かれたポケモンがたくさん記録してあった。
「これは、アンノーンというポケモンだ。アンノーンは姿形が固体によってバラバラでね。その全てを記録したのがこのアンノーン図鑑だよ」
「たくさん…いる…」
ぱらぱらページをめくるルーの後ろでロジーは熱弁を始めた。
「二年前研究を始めた当初はまったくの白紙だったこの図鑑なんだが、とあるトレーナーが遺跡の秘密を解き明かし地下に広がる内部でアンノーンをたくさん捕まえてきてくれたんだ!その子のおかげで様々なことがわかったよ。アンノーンは文字としての役割があって、石版に描かれたアンノーンたちは文章になっているんだ!遺跡の中にもいくつかアンノーンのメッセージがかかれた壁が見つかっているんだよ」
「…遺跡、見てもいい…?」
一通り目を通したルーは、熱弁するロジーを見て首をかしげた。ロジーは「もちろんだとも!」と何度も首を縦に振る。了承を得たルーは早速研究所の外に出て行った。
俺は後に続こうとしたロジーの腕を掴んだ。
「ちょっと、聞いてもいいか?」
「なにかな?」
「…この、写真の人を知らないか?」
ポケットに入れっぱなしにしてあった写真を取り出して、ロジーに差し出した。
「この、白衣の人かい?」
「あぁ…」
「すまないね、知らない人だ」
返された写真をまたポケットに入れて、俺は笑った。
「そっか、ならいいんだ!行こうぜっ」
俺を見上げていたブビィに声をかけ、ルーを追いかけ外に出る。辺りを見回すと一番近い洞窟の中にルーが入っていくのが見えたから俺もそこに向かう。
洞窟に入ると入り口から少し歩いたところに石版があり、何故か足元には人間が落ちてしまうくらいの大きい穴。ルーは穴の前に立ち石版を眺めていた。
「どうだい?それは化石ポケモンのカブトが描かれた石版なんだ!」
ロジーがルーの隣に立つとそう言い、今度は穴を覗き込むようにしゃがんだ。
「そして、この穴の下にアンノーンがいる」
「…」
ルーも同じようにして穴の下を眺めた。俺も見てみれば、梯子がかけられていて下まで降りられるようになっている。
「行ってみるか?ルー」
「…うん」
「アンノーンも野生には違いない、襲ってくるから気をつけて行っておいで」
「ロジーは来ないのか?」
そう聞けばロジーは下を見たときにずれた眼鏡をかけなおして笑った。
「僕は研究所で研究の続きをするよ!何かあったらすぐおいで」
「わかった!じゃあ俺から行くぜ」
ブビィを片腕に抱えて梯子に足をかけ下を目指す。案外近いようですぐに足元が見えた。地面からもう少しあるところで面倒になり飛び降りて着地すれば、砂か埃かわからないものが舞う。上からルーとゴースがゆっくり下ってきた。
上の洞窟とはまったく違う雰囲気、壁にはアンノーンが描かれていてまさしく遺跡!って感じだ。
「こんなところがあったなんて、知らなかったぜ…」
「…」
アンノーンが描かれた壁にそっと手を当てたルーは、何故かどこか悲しそうで。隣でふわりとルーに寄り添うゴースは慰めているように俺には見えた。
「もうちょっと奥まで行ってみようぜ!」
俺がそう言えば、ルーは最初からそのつもりだったのか先を歩き始めた。一番興味があるのはルーみたいだし、行き先は任せるとしよう。同じような景色が続く遺跡の中を俺たちは歩き始めた。




「ルー、疲れてないか?」
「…大丈夫」
歩いて、その周りを調べて、また歩いて…。それを何度か繰り返した頃、そう声をかけたけどルーは歩みを止めない。この遺跡に何があるのか考えてもまったくわからないけど、ルーを惹きつける何かがあるんだろう。ロジーが言ったようにアンノーンがいつ襲ってきても大丈夫なようブビィと警戒はしていたが、その気配は全然なくて正直拍子抜けだった。
「…リオ」
ルーが指したほうには、今まで見てきたものとは少し違った描き方がされた壁があった。研究所にあった石版と同じようなものだ。ロジーが言っていたことを思い出す。アンノーンは文字にもなっているって。すぐ傍まで行って見上げてみる。
「なんて書いてあるんだろうな…」
「リオッ!」
後ろにいたルーが突然大声で俺を呼んだ瞬間だった。
ゴースとブビィが俺のほうに吹っ飛んできたから咄嗟に受け止めて壁に背中を打つ。痛みに顔を歪めて前を見てみれば、本物のアンノーンがいた。それも大量にだ。ルーの周りを螺旋状に回りながら、こちらを睨み付けるように見ている。
まるでルーを、何かから守っているように。
「なん、だ…?」
一瞬だけ力を抜くが、すぐに立ち上がって構える。それは、ルーが震えているのが見えたから。ルーはポケモンの気持ちがわかるんだ、アンノーンたちが何かを思っていたとしてルーが怯えているのなら、それは良くないことってわけだ!
「ブビィ!大丈夫だな!?」
「ブー!」
吹っ飛ばされたことに怒っているのか、ブビィもやる気マンマンの様子で俺の前に立った。ゴースは俺の後ろでおどおどしているから、そっと背中に隠してやる。
ルーがキョロキョロとアンノーンたちを見回すが、あいつらは離す気がないのかルーを囲ったまま。あの状態じゃ自力で逃げるのも無理そうだ。
「ルーを放せ!ブビィっひのこだ!」
ブビィが勢い良く口からひのこを出せば、数匹のアンノーンが前に出てひかりのかべで防がれてしまった。そして体からいくつもの光の玉を発すれば、それがブビィ目掛けて飛んでくる。
「ブ、ビィッ!」
何個か避けられたものの、一つ当たってしまい地面に伏せるブビィ。
「なんだ、あの技は…?」
よたよたと立ち上がったブビィの様子を見れば、体が少し濡れていた。
「水…!?ブビィっ大丈夫か!?」
弱点を食らったなら相当しんどいはずなのに、ブビィは振り向いてぐっと頷いた。それに俺も頷き返せば、改めてアンノーンたちを見る。
「ルーッ、逃げ出せそうか!?」
「…リオ…」
首を横に振るルーに内心焦る。数でこられちゃブビィが不利すぎる。かといって俺の手持ちはブビィだけ…。
「!ゴースっお前も協力してくれ!」
「ゴー…」
振り返ってゴースを見れば、すぐに怯えているのがわかった。今まで一度も、ゴースが戦っているところを見たことがない。きっとルーと同じで戦いが嫌いなのだろう。
「ルーを助けるのは、ブビィ一人じゃ無理だ!」
ゴースが見つめる先では、今度はこちらからと仕掛けてきたアンノーンたちをブビィが食い止めている。
「もう、やめて…!みんな、やめて…!」
それをアンノーンに囲まれたまま見ているルーも辛そうで、なんとか意思疎通を図ろうとアンノーンたちに手を伸ばすが軽く弾かれてしまった。
「ブビィ…!」
さっき食らった技をまた受けて、どんどんボロボロになっていくブビィ。その姿を見ていられなくて、俺は思わず叫んだ。
「お前は、ルーを守りたくないのかよっ!?」
「!!」
ゴースが俺の頭を飛び越え、天井近くまで飛び上がった。
そして先ほどの怯えた表情から一転した凛々しい顔つきでアンノーンたちを見下ろせば、いくつもの黒い玉を出現させ一斉に降り注がせる。当たったアンノーンたちは次々と倒れていき、ブビィを攻撃していたやつらはルーを守る仲間のところに戻っていった。
「ゴース…」
ルーがゴースを見上げると、ゴースは未だに螺旋状になったままのアンノーンにとっしんしていった。しかし、最初のようにまた弾き飛ばされてしまう。
「ゴースっ!」
なんとか受け止めたけど、勢いが強すぎて一緒に床に倒れる。色んなところをうって体が悲鳴を上げているみたいだ。
ブビィも今にも倒れそうにふらついているし、俺の腕の中のゴースは気絶してしまっている。なのにルーの周りのアンノーンは減る気配がなかった。
「くっそ…」
どうしたらいいんだ…!俺たちはもう戦えない、ルーの声も届かない…!
俺が睨みつけていると、アンノーンたちの半分が俺たちのほうに飛んできた。そしてルーにしているように、俺たちの周りを回り始める。
「やめてよぉっ…!」
ルーが涙声で叫んだ。ふ、と意識が遠のく。さいみんじゅつか、何かだろうか…?





「バブルこうせん!」


誰かの声が聞こえた。
けど、逆らえない何かによって俺は意識を手放した…。








「…オ」

「リオ…!」


眩しい。まぶた越しにも外が明るいのがわかるくらいに…眩しい?
「良かった、目を覚ましたね」
「ロジー…?」
「あぁ、ごめん。なかなか起きてくれないから、ライトを当ててみたんだ」
よく勉強机においてあるようなライトを俺の顔に当てていたらしく、ロジーはそれのスイッチを切った。どうりで眩しいわけだ…。
どうやらここは遺跡の外の研究所のようで、体を起こせばルーとゴースが駆け寄ってきた。
「……!ルー、ど、どうして…!?ていうか、なんでここに…」
「助けて、もらったの…」
「ブビィー!」
「ちょっぐぇ!」
色んなことにパニックになっていると、ブビィが俺にタックルをかましてくる。また布団に逆戻りした俺は、腹にブビィを乗せたままルーを見る。
「だ、誰に?」
「知らない、人…もう行っちゃった…」
「驚いたよ、彼が君を背負ってここに運び込んできたんだけど、かすり傷だらけだし、ブビィもゴースも瀕死で…。何があったかはルーちゃんに聞いたけど、まさかアンノーンがそんな行動を取るなんてねぇ」
どうやらルーを助けたやつが、俺をここまで運んでくれたらしい。お礼を言いたかったが、もういないんじゃしょうがないか…。
「もう少し休んでいくといいよ。
あぁ、そういえばさっき、僕の友達が来ていたんだ」
突然何を言い出すんだろう、とブビィをベッドから降ろしながら思う。ルーは椅子に座ってゴースの頭を撫でていた。褒められているんだろうか、ゴースは嬉しそうだ。
「ヒワダで最近研究をしている人なんだけどね、その人に聞いたら君の探している人、この前見たって言ってたよ」
「なっ…!?」
思わず立ち上がる。足の傷が痛んだけど、そんなこと気にならないほど気分が高まっていた。そんな俺の様子もかまわずロジーは続ける。
「特徴がぴったり当てはまるらしいから間違いないよ。ヒワダの森できのみを探していたら、その人に会ったらしいよ」
「ありがとうロジー!すぐに行かねえと!!」
「言っただろう?もう少し休んでって。これからも旅を続けるなら少しの傷でもちゃんと治したほうがいい」
「リオ…」
ルーが俺の服を引っ張ってベッドに戻そうとするから、大人しく俺はベッドに戻った。ほっと息をついたルーは椅子に座りなおし、遠くを見ながら小さく零した。
「…そんなに、会いたい人?」
「僕も少し気になっていたんだ、写真じゃ白衣を着ていたから僕と同じ研究者なんだろうけど…行方がわからなくなるほどなんてアクティブすぎやしないかい?」
ポケットから写真を出せば、色々あったせいで少し曲がってしまっていた。ベッドサイドの小さい机において伸ばしてやって、ルーに写真を差し出す。素直に受け取ったルーはじっとそれを見始めた。
「俺は、会いたいから旅をしてるんだ。…父さんに」
そう、俺の旅の目的は…行方不明の父さんを探すこと。






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