そして私は数日前の自分を恨むことになる。


「……最悪」

やってしまった、やってしまった!
数日前、ポケットに入れていたはずのクロコダイルさんからもらった、ホテルの部屋番号が書いてある紙。
ポケットに入れたまま、洗濯してしまった。くしゃくしゃのボロボロな姿に変わって出てきたそれに、私は項垂れるしかなかった。

「番号、なんだっけ…」

クロコダイルさんが滞在しているホテルは、島の中でも一流のホテルだ。規模が大きいため、部屋番号の桁数も多く、私が完璧に記憶しているわけもなかった。

「何やってんだ私…」

閉店間際の店のカウンターで項垂れる私をマスターは苦笑いしながら見ていた。理由はきっと気付いているんだろう、私は何も言ってないけれど。

「名前ちゃん、最近変わったねえ」
「へ?」

変わった?
私が首を傾げると、マスターは慌てて言った。

「いや悪い意味じゃなくてね。今までよりももっと可愛くなったよ」
「え!やだ、なんですかマスター!」

そんなこと言っても何も出ませんよー!
そう言いながらも、すっかり機嫌を良くした私がすでに洗い終わって濡れたグラスを拭いていたら、ふいにマスターが、あっ、と声をあげた。

「名前ちゃん、上がっていいよ」
「え?」

マスターのその声と同時に、店のドアにぶら下がるベルが鳴った。

「お迎え、来たみたいだね」

マスターの目線を辿る。
視界に入ったのは、葉巻をふかす、仏頂面。大好きな人。

「…クロコダイル、さん…」






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