「はっ……、ん。でも、シュラ。」
「……何だ?」


酸素不足で掠れる意識すら心地良いと感じるなんて……。
全てはシュラが与えてくれる深い愛のひと時のせい。
私は、ぼんやりした視界の中いっぱいに広がるシュラの頬に、無意識に手を伸ばした。


「次はダメかもよ?」
「何故だ?」


私の言葉に、シュラは眉を顰める。
伸ばした手はシュラの頬に触れようとして、でも彼の表情を見たら、ついつい眉間の皺に指が伸びてしまった。
眉間をツンと突っ付かれて、益々、厳しい顔になるシュラがおかしい。


クスッと小さな笑いを零した私に、シュラは両手で私の頬を捉え、逆襲とばかりに正面から強い瞳で見据えた。
一瞬、ハッとして止まる息。
困惑の眼差しに絡まる彼の熱い視線を、大きく目を見開いて見ていれば、予想通りに引き寄せられて、深い口付けが降る。
再び酸欠に陥った私の身体は、シュラの腕の中にグッタリと凭れるしかない。


「で、どうしてダメだと思うんだ?」
「だって……。」


酸素が不足し息が上がった状態で何とか身体を起こして、ベッドに横になったままのシュラを見下ろす私。
乱れた呼吸のために掠れた声でシュラに伝えた。


「だって、シュラは聖闘士だから。命を懸けて世界を守るのが務めでしょう?」
「だから、何だ?」


それは子供の頃から分かっていた事。
いつ命を落とすか分からない。
いつ私の傍からいなくなるのか分からない。
その覚悟を常に抱いて、私はずっと過ごしてきたから。


「私より早く死ぬのは確実だもの。現に私を置いて、二回も死んじゃったし……。だから、次は同じタイミングで生まれ変われないわよ、きっと。」


先にシュラが生まれ変わり、その何十年も後に私が生まれ変わったとしたなら、正直、その長い年月の分だけ出逢う事は困難だ。
例え出逢う事が出来たとしても、私が生まれ変わった頃には、シュラは別の人を選んでいるかもしれない。
年齢の離れた私には見向きもしないかもしれない。


「それなら大丈夫だ。アレックスが死ぬまで、俺は天界辺りで待っているから。それで二人同時に生まれ変われば良い。」


例え、先に死ぬ事になったとしても、絶対の自信を持って私を待ち続けてくれると言うシュラの声も瞳の色も、その強い想いを反映して深く輝いていた。
私は想いを籠めて、ただ大きく頷くだけ。





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