ゆっくりと意識が浮上し、私は目を覚ました。
外はまだ暗い。
この静けさ……、三時頃だろうか?
私はシュラの胸元から頭を上げると、規則正しく寝息を立てる彼をジッと見つめた。


私が、この磨羯宮で暮らすようになってから十三年。
その日からずっと変わらず、シュラは必ず私を腕に抱いて眠る。
今ではそうしていないと心地良く眠れないのだと、彼が言った。


七歳の少女時代から十三年。
その間、私達の関係は、ただの添い寝から、深く愛を確かめ合う仲に変わったけれども。
子供の頃でも大人になっても、お互いを想い合う気持ちは何一つ変わってはいない。


彼の元で育ち、彼の手で女となり、彼だけを想って生きる。
私はシュラの傍で寄り添っていられさえすれば、それだけで良いと思っていた。
思っていた筈なのに……。


「……アレックス?」
「シュラ……。ごめん、起こしちゃった?」


気持ち良さ気に眠っていた筈のシュラが、いつの間にか目を覚まし、私をジッと見ていた。
私は手を伸ばし、まだ眠たそうに目を細めている彼の髪をゆっくりと撫でるように掻き上げる。


「いや……。アレックスこそ、どうした?」
「分からないけど、目が覚めちゃったの。」
「そうか……。」


シュラは短くそう言うと、自分の髪に触れる私の手を取り、引き寄せ、手の甲にそっと口付けた。
暗闇の中でも、伏せたその睫の濃さが頬に影を作り、彼の色気を増長させる。
手の甲から腕へと上り始めた唇の感触と共に、私の身体の内側を徐々に刺激していく甘い痺れ。


「夢、見ていたの。」
「……夢? どんなだ?」
「三歳くらいの頃の夢かな? シュラの背におんぶして貰って、夕焼けの十二宮を上っている夢。」


私の言葉に、シュラは一旦、唇を離し、再び目を細める。
懐かしいなと言いたげな表情で、彼はいつものように微かにはにかんだ。


「ロスにぃも良くおんぶしてくれたけど、でも、私はシュラの背中が一番好きだったな。」
「そうか……。」
「うん。そうなの。」


七歳年上のアイオロスの背中は、何処か大き過ぎるようにいつも感じていた。
その点、まだ彼自身も幼かったシュラの背中は、大き過ぎず小さ過ぎず、私がしがみ付くのに丁度良い大きさで、程良い温もりを与えてくれたのだ。


「アレックス、まさかとは思うが……。あの頃、俺におんぶして貰いたいがために、宮を抜け出して隠れていた訳ではないよな?」
「半分は、そのまさかだったりして?」


冗談めかしてペロッと小さく舌を出せば、それが癇に障ったのか、シュラはグッと私の顎を捉えて上を向かせる。
ホンの刹那の時間、視線が絡み合った後、乱暴なまでに濃厚なキスを施された。


「ん……、んんっ!」


息も出来ない程に深く、そして情熱的に絡まり合う口付け。
そのままグルッと体勢を変えたシュラに組み敷かれ、再びシーツの波に沈められる。
やっとキスから解放された頃には、その貪欲な唇は首から下へと彷徨い出していた。


「もう、こんな遅い時間だよ? また、するの?」
「……煽ったアレックスが悪い。」
「煽ってなんか、あ、ない……。ああっ。」


私の身体中に隈なく唇を走らせ、顔も上げずに、勿論、止まりもせずに。
直ぐにも反応して開きつつある私の身体を、シュラは念入りに愛撫していく。





- 2/30 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -