「アイツよぉ。オマエの事、好きだぞ。」
「…………は?」
「は? じゃねぇよ。」
「は?」


何を言っているのだ、この人は。
何を言い出したんだ、この人は。
あれか?
有り得ない事を伝えて、私がどんな反応をするのかを、楽しんで見ているのか?
心の中でニヤニヤ笑っているのでしょう、困惑した私を眺めて!
ならば、こちらにだって考えはある。


「誰が見たって分かるってモンだろ。アイツは、もう何年も前からアレックスが好――。」
「デスマスク様。」
「あ? なンだ?」
「デスマスク様!」
「あ? だから、なンだよ?」


彼の心の中のニヤニヤ笑いが、一瞬で、イライラに変わったのが分かった。
でしょうね、優越感に浸りながら爆弾シュートを放ったつもりが、途中で遮られては、折角の爆弾も爆発せずにボテボテと転がるだけだもの。


「それ以上、その不快極まりないデタラメを並べるようであれば、巨蟹宮の死仮面、一体残らず全て浄化して成仏させますけど、良いですね?」
「あぁ?!」
「良いですね!」
「イイ訳ねぇだろ、ボケ! 俺の大事なアイデンティティを踏み躙る気か?! 死仮面、全部、成仏ってオマエなぁ……!」
「じゃあ、もう二度と、その話題は出さないようにお願いします。分かりましたね?!」
「チッ……。」
「分・か・り・ま・し・た・ね?!」


焦るデスマスク様、勝ち誇る私。
一言ずつ区切って強調して言い聞かせれば、渋々、本当に渋々、彼は口を噤んだ。
良し、勝った!
ホッとする心とは裏腹に、表情は引き締める。
ちょっとでも油断を見せれば、また直ぐに攻撃に移るだろう事は分かっているのだ。


「分かった、分かった。もう言わねぇ。」
「そうですか、それは良かったです。正直、アレを全部、成仏なんてさせたら、流石の私でも一週間は寝込むぐらいにはなりそうですから。あの数の悪霊ですからね、力を使い果たしてしまう可能性は高いです。」
「アレックス、オマエ、やっぱ相当におかしいわ。普通な、巫女程度じゃ、死仮面一体すら難しいンだよ。成仏させるとか、浄化するとか、黄金クラスで、そっち方面に強い力を持ってるヤツか、教皇ぐらいのモンだろ、出来ンのは。それだって全部は無理じゃねぇのか。アレを全部となると、女神の嬢ちゃんか、他の神か……。」
「知りませんよ、そんなの。出来るものは、出来るんですから。」
「……ったく。ホントどうなってンだろうな、オマエは。人間か、本当に?」


どこまでも失礼な人ですね、デスマスク様。
人間じゃないとしたら、何だって言うんですか?


「やっぱなぁ、オマエのソレ。俺の力に近いんじゃねぇ?」
「だーかーらー、絶対に違います! これはちょっとだけ強力な巫女の力です!」
「どこがちょっとだ、どこが? 規格外とか、そういうレベルじゃねぇだろ、アレックスは。」


ハァと、また溜息を一つ。
そして、ボソリと零される一言。
あの最凶な兄さんの関係者になると、皆が皆、常識外れになっちまうのかね……、と。





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