私の心を突き刺して



無口、寡黙、だんまり。
執務でも任務でも口数少なく、必要最小限の言葉しか発しない彼は、その鋭過ぎる目付きと、殆ど感情を表さない無表情もあって、聖域中の誰からも怖い人だと思われている。
神官も、雑兵も、黄金以外の聖闘士も、彼が傍を通り過ぎるだけでビクリと身体を直立させるくらいに、無言の威圧感を放っている人。
しかも、無口な彼は、怒っている訳でも不機嫌な訳でもないとの弁明すらしないから、余計に誤解を与えてしまっているのだ。
本当の彼は、穏やかで落ち着いた人だというのに……。


「そういえば……、貴方と付き合う事になった時も、ちゃんと告白すらされなかった気がする。」
「……そうだったか?」
「そうよ。何だか色々とうやむやにされちゃったけど……。」


温かなベッドの中、その腕の中に抱かれた私に、彼は髪を撫でたり、額にキスを落としたり、耳朶や首筋に唇を滑らせたりと、絶え間なく愛情表現を繰り返す。
言葉にも表情にも出さない人だけど、こうして態度には惜しげもなく出してくれるし、その表現方法は情熱的ですらある。
キスは息苦しい程に深く、愛撫は目眩がする程に濃厚で、愛の交わりは壊れそうな程に激しい。


「あの時は、気付いたら抱き締められていて、気付いたらキスされていて、気付いたらベッドの上で貴方と抱き合っていた。で、訳が分からない内に事が進んで、気付いたらココで同棲していたわ。」
「だが、アレックスは拒否しなかっただろ。」
「言ったでしょ。拒否も何も、気付いたらこうなっていたって。強引過ぎるわ。」


お陰で、未だに「好き」も「愛している」も言ってもらえていない。
結構、長い付き合いになるのに、考えてみると驚きだ。
彼の生真面目さと一途さを思えば、不安も心配もないのだけど、やっぱり私も女だから、言葉が欲しいと思ってしまう事もある。
愛を交わし合っている時ですら、「愛している」の一言すらないのは、少し寂しい。


「俺とのセックスは、嫌か?」
「……はい?」
「俺は、いつも全身全霊を籠めてアレックスを抱いている。それでも伝わらないものなのか?」
「それは、だって……。」


言葉がなければ、そういう行為だけが目的なのだと受け取られかねない。
どんなにシュラが心を籠めていようとも、心の中の気持ちを目で見る事は出来ないもの。
相手の心の中が透けて見えるのなら、この世の中に誤解なんてものは生まれないわ。


「何も言わずとも、届いていると思っていた。何度セックスしても、いつもお前は、これ以上ない程よがっているからな。」
「っ?! し、シュラッ!!」
「何故、怒る? 本当の事だろう。互いの想いが深いから、セックス自体も深くなる。何度シても最高で、また直ぐにシたくなる。」
「それ、は……、その……。」


求める気持ちに終わりはない。
抱き合って、満足して、でも、また直ぐに欲しくなって、我慢出来ずに何度も抱き合う。
シュラの想いの表現は、いつも真っ直ぐなのだ。
回りくどさは一切なく、飾ったり、演出したりもない。
あるがまま、そのままに、一直線に私の心へと飛び込んでくる。
そんなシュラが相手だったからこそ、告白も何もなくても、安心して流されてしまう事が出来たのだ。


不意に、それまで顎のラインや首に触れていたシュラの唇が下がり、右の鎖骨を食んだ。
ジュッと強く淫靡な音が、暗い部屋の中に響く。
ビクリ、快感の震えが走り、背中を反らした私。
ほぼ同時、肩を抱く腕とは反対の手が、じんわりと私の双丘を撫で始めた。


「あ、シュラ……。」
「何だ、アレックス?」
「だ、駄目よ。今さっき、し終わったばかりじゃない。」
「俺も言っただろう。また直ぐにシたくなると。」
「んっ……。」


そう言い終えるよりも早く、彼の長く太い指が、双つの丘を割って、私の最も敏感な場所へと潜り込んできた。
それだけで、得も言われぬ快感が、私の身体を走り抜けていく。
この身体を知り尽くしているシュラの愛撫は、とても巧みで的確だ。
直ぐに彼を受け入れる準備が整ってしまった私の様子に、嬉しそうな笑みを口の端にフッと浮かべた後、シュラは遠慮なく私の奥へと一気に押し入ってきた。
はぁ、二人同時に歓喜の吐息を漏らす。


言葉など幾ら並べたところで、口先だけの事もある。
彼は、そんな曖昧な言葉など全て省き、私の心も、私の身体も、その情熱的で真っ直ぐな愛で貫いた。
言葉はいらない、言葉が欲しいと求める必要もない。
シュラの真っ直ぐな想いは、私の心を鋭く突き刺して、決して抜ける事はないのだから。



直接的で鋭利な恋



‐end‐





二話連続でピロートーク話となりました。
しかも、どちらも二回戦目に突入するとか、山羊さま、どんだけ欲求不満ですか(苦笑)
流石はパーン神、性豪の神の御加護がついてる男は違いますw

2019.01.12



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