と一緒



夕方のお買物を終えて巨蟹宮へと戻ってくると、デスマスク様が私よりも先に帰宅していた。
教皇宮での執務を終えて、ノンビリと夕方の時間を過ごすのが普段の彼だが、今日はいつもとは違っている。
リビングのドアを開けた私の視界には、床に這い蹲るデスマスク様の姿が映っているのだから。


「何をしてらっしゃるのですか、デスマスク様? そのようなところで、そのような格好で。」
「何って……。蟹之介だ、蟹之介。」


世間で言うところの『雌豹のポーズ』といったところか、頭を床にくっ付け、お尻を高く上げたセクシーポーズでソファーの下を覗き込んでいる。
とはいえ、何かを探している様子の姿では、さっぱりセクシーには見えないのだけれども。
しかも、雌猫のマス代とスマ子がデスマスク様の周囲でじゃれ掛かっている様子は、非常に滑稽でしかない。


「蟹之介が、どうかしたのですか?」
「姿が見えねぇンだよ。だから、こうして探してるってワケだ。」


言われて部屋の中を見回す。
この巨蟹宮では、雄猫二匹と雌猫二匹の、合わせて四匹の猫ちゃんを飼っている。
雌猫は二匹ともデスマスク様の横にいて、雄猫の内の一匹・蟹五郎はキャットタワーの上で眠っているのが見えたが、もう一匹の雄猫の姿は何処にもない。


「お買物に行く前には居たと思いましたよ。そのソファーの上で仲良くお昼寝していた筈ですけど。」
「なら、ど〜こ行っちまったンだぁ?」


デスマスク様は這い蹲りポーズのまま、ソファーからテレビの方へと進み、その下を覗き込んでいる。
そんな彼の姿が楽しいのか、黒縞のスマ子は足首にじゃれ付き、白猫のマス代が背中にヒョイと飛び乗った。
「邪魔すンなよ。」と言いつつも振り払わないデスマスク様と、益々、擦り寄る雌猫ちゃん達。
これは深く関わらずに、放っておいた方が良いわね。
そう思って、自分のお部屋へと向かう私。


「……あ。」


いた、蟹之介。
女官用の簡素な私の部屋の中。
唯一の装飾ともいえるヌイグルミ、ベッドの上に置かれた二体の猫のヌイグルミの間にスッポリと収まって、本物の猫ちゃんがスースーと眠り込んでいた。
一体、いつの間に、何処から入り込んだのでしょうか、この子は?


「おーおー。イイ場所で寝てンな、蟹之介のヤツ。」
「お買物に行く直前に入り込んだのでしょうか。鍵も掛けていったのに。ソファーで寝ていたと思ったのですけど。」
「羨ましいこって。アレックスの部屋には、俺でも入れて貰えねぇってのになぁ。」
「まさか、入りたかったのですか?」
「そりゃ勿論。」


マス代とスマ子を両腕に抱き、ニヤリと笑うデスマスク様。
本気で言っているのか、ただの冗談なのか。
ベッドの上から抱き上げた蟹之介の肉球を、両腕が塞がって無防備な彼の頬にグリグリと押し当てた私は、大きな溜息を吐いたのだった。



と暮らす日々
無邪気な猫と、不埒な御主人様



(オマエの知らねぇ間に、俺も上手い事、忍び込むかねぇ。)
(忍び込むって、いつですか?)
(夜中に決まってンだろ、夜中。夜這いなンだからよ。)
(よ、夜這いって?!)



‐end‐





床に這い蹲る蟹さまが書きたかっただけなんです。
あと、その背中に乗っかって御満悦な猫ちゃんの姿もw

2017.08.27



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