「ふ、服を脱ぐだなんて……。眺めて楽しむだなんて……。それってストリップじゃないの?」
「あぁ、そうだな。まさにストリップだ。」
「そ、そんなの……、そんな事……。」


出来る訳がない、無理に決まっている。
そう言おうとしたアレックスの口を塞ぐように、しなやかな指先が一つ、唇に押し当てられた。
何ものをも斬り裂く剣、最強の刃ともなるシュラの手は、これが『聖剣』なのかと疑ってしまう程に長く、美しく、その指先はスラリとしていて細い。
その手が自分に直接、触れた事にハッとして、アレックスは後に続く言葉を失ってしまった。
そして、身動きする事も、息を吐き出す事も、瞬きする事も、視線を逸らす事すら、その一瞬、全てを忘れてしまっていた。


「出来ないという事はないだろう。手さえ動けば服など簡単に脱げる。毎日、毎夜、当然、着替えはしてるだろうからな。」
「そ、それはそうだけれども……。す、ストリップというのは、ちょっと……。」
「遣り方が分からないというのなら、俺が手本を見せても良いぞ。」


俺も脱ぐから、同じように脱げば良い。
交互に行えば恥ずかしさも半減するとでも言わんばかりに、シュラはそんな提案まで始める。
顔色一つ変えず、ニヤリとした笑みも浮かべたまま、平然とそんな事を言い放つ様子を見ていると、その程度の行為は、大した事ではないように思えてくる不思議。


いやいや、そんな筈はない。
うっかり彼の作り出す『さも当然』な雰囲気に飲まれて納得してしまうそうになった頭を、アレックスはブンブンと振って正気に戻ろうとした。
妙齢の男女が二人だけで、ストリップをし合うだなんて、十分に大した事だし、有り得ない事だ。


「て、手本も何も、出来ないものは出来ないわよ。こ、恋人でもない男の人の前で服を脱ぐなんて、普通に考えて、絶対にしないもの。」
「そうか……。なら、仕方ないな。」
「……え?! わ、やっ?!」


シュラの方に引き寄せられていた身体が、刹那、ふわりと浮かんだと思った次の瞬間、アレックスの視界がグルリと回った。
何が何だか分からない内に、ギシリと軋む音が響き、身体にはズシリと重い体重を感じる。
そう、アレックスはソファーの上に押し倒されていた。
その上に、シュラが圧し掛かり、彼女を逃さないようにと、御丁寧に両手首までシッカリと掴んでいる。


「し、シュラッ?!」
「ストリップは嫌なのだろう? なら、別の選択肢になる。他にプレゼントを貰うのなら、まぁ、こういう事にはなるな。これ以外に、用意出来るものは何もないし。」
「だ、だから、また別の日にプレゼントを買ってくるから……。」
「誕生日プレゼントならば、今日でなければ意味がない。俺は今直ぐに、お前からのプレゼントが欲しい。今、受け取りたい。」


となれば、シュラの提案通りにストリップをするか、でなければ、このまま身体で……。
いつの間にか、唇に浮かんでいた薄い笑みが消え、真っ直ぐな眼差しでアレックスを見下ろしているシュラ。
その表情から、冗談やからかいの類ではないと読み取れて、益々、頭の中が混乱してくる。


シュラって、こんなに我が儘だった?
今日が誕生日だから、特別に意固地になっている?
今日に拘り、譲れなくなっているの?


グルグルと考えている間に、回答を待っている事に痺れを切らしたのか、シュラの唇が首筋を目掛けて吸い付いてくる。
アレックスは慌てて声を上げ、彼の動きを静止しようとした。





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