サイレントナイトに誓う



――バサバサバサッ!


大量の荷物を床に下ろして、ホッと息を吐く。
久し振りのお休みに二人して張り切って、アレもコレもと欲しいものを買い漁り、両手に持ち切れない程の荷物の山になってしまった。
と言っても、その殆どが私の買物で、その殆どをアイオロスが抱えて持ってきてくれたのだけれど。


「今日は楽しかったな。」
「楽しかった? 本当に? 私の買物ばかりだったのに?」
「アレックスの買物に付き合うこと事態、滅多にないからさ。一緒に歩き回るだけで楽しかったんだ。」


余りに忙しくて、共に出掛ける事など殆どなかった、この頃。
毎日、一緒に過ごして不満はないとはいえ、やっぱり外でデートする時間が欲しかったのも事実で。
買物だって一人で選ぶのと、アイオロスの意見を聞きながらとでは、買った後の喜びも随分と違うもの。


「アレックス。さっき選んだ服、着てみせてくれよ。」
「え、ココで?」
「そう。折角、他に邪魔者のいない絶好の機会だしね。アレックスの可愛いワンピース姿を独り占め出来る。」


華やかな灯りに彩られ、はしゃいだ街での買い物を楽しんだ後、私達が辿り着いたのはホテルの一室だった。
今日のためにアイオロスが押さえてくれていたらしい。
部屋には既に豪華な料理とシャンパンが用意されていて、窓際のテーブルに置かれた二つのグラスに、夜のイルミネーションがキラキラと反射している。


「いつも味気ない女官服姿ばかりだものね。」
「そんな事は言ってない。アレックスは女官服も似合っているし、雰囲気があってセクシーだ。でも、その姿は誰でも見る事が出来るだろ。だから、私服姿は俺が独占したい、そういう事さ。」
「存外にズルい男だったのね、アイオロスは。」
「そうさ。知らなかったのか?」


クスクス笑いながら彼が差し出すシャンパンのグラス。
長いグラスの下から上へと金の真ん丸な泡がゆっくりと浮かんでいく様が、胸の奥にドキドキ感を湧き上がらせていく。
クイと一口、喉に滑らせてから見遣るアイオロスの姿。
彼は一息にグラスの中身を飲み干して、「あぁ。」と心地良さげに息を吐いた。


「酔っ払うわよ、一気飲みなんてしたら。」
「平気さ、このくらい。」
「じゃ、この手は何?」


アイオロスの両手は私のスカートの裾を鷲掴みにし、今にも上へと引き上げようとしている。
これが酔っ払いじゃなくて何だと言うのか。


「ほら、ファッションショーさ。脱がなきゃ着替え出来ないし。アレックスがモタモタしてるから、俺が脱がして上げなきゃね。」
「じ、自分で脱げるわよ。ていうか、ファッションショーなんてする気ないでしょ、アイオロスは。」
「ん〜?」


手を振り払っても、いつの間にかファスナーを下ろし、服をたくし上げて、スルスルと衣服を脱がしていく、無駄に器用な手先。
あっという間に下着まで脱がされて、気が付いたらベッドの上に二人、折り重なって転がっている。


「ねぇ、ファッションショーは?」
「ん? 後で良いんじゃないか? 時間はたっぷりある事だし。」
「新しいお洋服を着てみせてと言ったのは、アイオロスでしょ。お料理だって、まだ一口も食べてないのに……。」


答えは返ってこなかった。
その代わりに、熱い抱擁と深いキスに捉えられる。
考える間も与えられずに歓喜の渦の中へと落とされて、自分が何処にいて、何をしているのかさえ思い出せなくなった。
本当にズルいのだ、彼は。
いつでも自分の思うままに、好きなように事を進めてしまう。
私は、いつも受け入れるばかりで、流されて飲み込まれてしまう、アイオロスという激しい濁流に。


「ん……、あ、ああっ。」
「く、アレックスっ……。は、はぁっ。」
「あ、アイオ、ロス……。」
「良かった……。凄く良かったよ、アレックス……。」


ドサリと隣に沈んだ重い身体から、スルリと伸びた太い腕が、疲れ果てて力も入らない私の身体をグイと引き寄せる。
苦しくて暑くて、逃れようとするんだけど、彼は決して離してはくれない。


「アレックス、俺の傍に居てくれないか。ずっと、俺が死ぬまで。」
「死ぬまでと言わず、死んでも傍に居るわ。」
「本当に、そう思ってる? こんな俺と一緒に居たいなんて……。」
「こんなアイオロスだから、傍にいたいの。」 


クセのある金茶の髪を撫でて、頬に軽いキスを落とす。
埋もれていた彼の胸から顔を上げると、窓の外、暗い空からは、真っ白な雪の塊が、ゆっくりと舞い降りていた。



サイレントナイトに誓う
変わらぬ愛の深さを



‐end‐





ロス兄さんは、やっぱり(エ)ロス兄さんでしたという話w
いつでも何処でも欲望のままに突っ走るのは、失った青春時代を取り戻そうとの思いですかね?
それにしても暴走し過ぎです、兄さん(苦笑)

2017.01.03



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