部屋に差し込む朝の光は、まともに瞼を開けられない程に眩しく、アレックスは両目を細めて、何度も瞬きを繰り返した。
彼女はベッドにうつ伏せたまま、顔だけを持ち上げて、部屋を歩き回る彼の姿を恨めしそうに見遣っている。
この光に焼かれて身体が消失してしまいそうだ。
身体に、心に、沁み入る光がジクジクと痛い。
だが、一方の彼は、シャワーを浴び終えてサッパリしたからか、首から下げたタオルで髪を軽やかに拭いながら、ご機嫌な様子で鼻歌など歌っている。
口元に浮かんだ深い笑みは、ゾンビの如くにグッタリとしたアレックスの様子を、面白がっているようにも見えた。


「こんなに晴れやかで気分の良い朝なのに、キミは今にも死にそうだね。」
「だって、気分も良くなければ、生きている心地すらしないもの……。」


その姿は、ゲッソリという言葉が、まさにしっくりくる。
アレックスは顔を上げているのが精一杯で、身体はベッドに貼り付いたままだ。
そこから上体を持ち上げるには、どれだけの体力を回復し、どれだけの気力を奮い立たせねばならないのか。
それを考えただけでも、更にゲッソリと思えてしまう。


「どうして、そんなに朗らかなのよ、ロディ……。」
「当然さ。思いの丈をこれでもかと吐き出せたからねぇ。けど、受け入れる方のキミは、いっぱいいっぱいみたいだったようだけど。四年振りのセックスは、そんなに辛いものだったかな?」
「そ、それは……。」


確かに、体力面では彼に対抗出来る術は欠片もなく、最後の方は、一方的にされるが儘になっていた。
だが、最初の数回は、久し振りに覚えた快感の波に飲まれ、その素晴らしい感覚に酔ってしまっていたアレックス。
無我夢中で彼から与えられる喜びに、自分も応えようと必死になっていた。
その事実に思い至り、疲れて青褪めていたアレックスの顔が、パッと赤く染まった。


「フフッ。やっぱりキミは素直だね。さ、シャワーを浴びて、さっぱりしておいで。シャワーから出てくる頃には、ルームサービスが届くだろうから。」
「でも……。」


時計を見る。
既に八時を越えていた。
シャワーを浴びるのは兎も角として、ルームサービスで朝食など食べていては、チェックアウトの時間には間に合わない。


「チェックアウトを十一時まで延長したから平気さ。まだまだ時間はある。ゆっくりしていても良いよ。」
「随分と気が回るのね、ロディ。」
「キミに無理を強いた自覚はあるからね。」


呆れの強く混じる声のアレックスと、それを苦笑いで受け流すアフロディーテ。
強気な物言いの割には、ベッドから起きる気配のない彼女の手首を掴み、力に物を言わせて引っ張り上げた。


「……身体が痛い。腰も背中も足も、何もかもが痛いわ。」
「すまないね。でも、悪いのはキミさ。鬱憤が溜まりに溜まっていたんだ。そう簡単に終われる訳もない。それに……。」


私の腕の中で妖艶に喘ぐキミが、余りに魅惑的で、興奮が抑えられなくなったんだよ。
そう、色の滲む声色で、アレックスの耳元に囁く。
彼女の色良い反応を狙ったように、確信犯的に。
そして、まさに狙い通り、半分、彼が抱えるようにしてバスルームへとズルズルと引き摺っていたアレックスの身体が、ビクリと面白いように反応をみせた。


「もうっ! からかうのは止めて、ロディ!」
「フッ。やっぱりキミは、誰よりも可愛いよ。」


クスクスと彼の軽やかな笑い声が響く。
窓いっぱいに差し込む朝の光の中、二人はまるで本当の恋人同士のようにも見えた。





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