三毛猫ちゃんと暮らすようになって、僅か一週間。
カミュ様は長期(といっても十日余りなのだけれども)の任務を仰せつかり、赤い瞳を潤ませながら聖域から旅立っていった。
余りに何度も振り返りながら十二宮の階段を下りていくものだから、途中で転げ落ちたりしないかしらと心配になる程に、後ろ髪を引かれていた様子で。


そんな状態だったのだから、帰還した時は、それはそれは大騒ぎだった。
教皇様への報告を超特急で済ませると、それこそ光の矢の如き速さで宝瓶宮まで駆け下りてきて、バタンと勢い良く開け放たれたドアに驚くシェアトに抵抗する暇さえ与えず、強引に抱き上げた後の、光速での頬摺りスリスリ攻撃。
あ、『シェアト』は三毛猫ちゃんの名前。
水瓶座の星の一つで、ミロ様が名付けてくれたの。
で、これには私も唖然と見ているしかなく、強要されたシェアトも、最初は呆然、それから何とか身を捩って脱出を図るも、敢えなく撃沈。
カミュ様の腕の中で、グッタリしてしまった。


「あの……、カミュ様。シェアトが瀕死状態なのですが……。」
「む?」


私に言われて初めて気付いたようで、慌ててソファーの上に猫ちゃんを降ろすカミュ様。
シェアトはブルブルと身体を震わせた後、直ぐさまソファーから飛び降りて、私の足下に身を隠してしまった。
そのままビクビクと、私の足の陰から、カミュ様の様子を遠巻きに見ている。
彼の突然の抱擁も勿論あるけれど、どうやら黄金聖衣の眩しさにも驚いている様子だ。


「余り無理を強要されると、嫌われますよ?」
「そ、そのような事は……。」
「ないとは言えませんよね、この状況では。」


ううっ、という呻き声が漏れ、カミュ様の顔が悲しそうに歪んだ。
でも、こればかりはどうしようもない。
猫ちゃんは気まぐれな生き物。
その子に無理を強いた方がいけないというもの。


「まずは聖衣を脱いで、シャワーを浴びて、着替えを済ませて、ゆっくりと落ち着いて休んでください。そうしていたら、自然と寄ってきますよ、シェアトも。」
「……それは本当なのか、アレックス?」
「本当です。」


言われて、その通りに行動を移したカミュ様。
今は普段の彼に戻り、ソファーにゆったりと腰掛けて、今日の新聞を流し読みしている。
勿論、内容などは目にも頭にも入ってはいなくて、チラチラと横目で猫ちゃんの様子を伺っているのが、端から見ていておかしい。
暫くの間は警戒していたシェアトも、いつものカミュ様の姿に戻ったからか、最初はドアの向こうから頭だけ出して様子を伺っていたところから、少しだけ近付き、床のクッションの上で丸まってコチラを眺めてみたり、更に近付いて、ソファーの足下から彼を見上げるまでになった。


「ほら、ココへ座りなさい。」
「ミャン。」


カミュ様がソファーをポンポンと叩く。
痺れを切らして抱き上げたりせず、あくまで誘うだけ。
それに応じて、ソファーに飛び乗ったシェアトは、彼の隣でコロンと横になった。


「やっと仲直りしましたか。」
「仲直りだと、アレックス? 別に喧嘩などはしてないが?」
「喧嘩じゃなくても、カミュ様はシェアトの御機嫌を損ねましたからね。やっぱり仲直りです。」


うっ、と再びの呻き声が上がり、私は思わず笑みを零す。
シェアトが来てくれた事で、明らかに笑いの数が増えた部屋の中で、私達はホッコリとした幸せを噛み締めていた。



と暮らす日々
貴方と猫と、仲良し家族



(お、カミュ! 帰って来たのか!)
(ミャ、ミャーン。ゴロゴロゴロ。)
(シェアト?! 何故、ミロに擦り寄るのだ?!)
(相変わらずミロ様が一番なんですね、シェアトは……。)



‐end‐





猫と暮らすシリーズ第9弾、我が師編です。
クールな表情のまま猫と戯れるのが大好きな我が師とか可愛いと思いますw
でも、何故か猫ちゃんは、我が師よりミロたんの方により懐いて、それを半泣きで見ていそうです(苦笑)

2015.02.22



- 18/37 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -