――コオオオ……。


「わっ。ほら、見てください。艶々の、ふわっふわですよ。」
「ふ〜ん……。」


身体中に付着していた泥を綺麗に洗い流して、濡れた体毛を弱めのドライヤーで乾かしていく。
まだ完全に乾ききっていない状態でも、ドライヤーの風を当てながら梳くブラッシングの感触が、とても滑らかで柔らかい。
真っ白でふわふわの長い毛は、家飼いの高級な猫ちゃんのようだ。
これが本当にシュラ様の宮に住み着いてしまった野良猫だったのかと、正直、疑ってしまう程。


「ほら、アフロディーテ様。やっぱり凄く美人ですよ、この子。」
「美人って、アレックス……。雄だろう、この猫。そもそも人じゃなくて、猫だし。」
「もうっ! 屁理屈を並べないでください!」
「ミャン。」


私はフカフカのホカホカに乾いた猫ちゃんを、アフロディーテ様の腕の中に押し込めた。
今度は首を引っ掴むなんて事はせず、ちゃんと両腕で抱っこしたからか、暴れずに大人しく彼の腕の中に収まる猫ちゃん。
ドライヤーの温かな風が心地良かったのか、今も目を細めたままで、ゆったりと抱かれている。


「先程とは打って変わって、随分と大人しいな。」
「さっきはアフロディーテ様の抱き方が悪かったのですよ。あんな風に首を掴まれては、嫌がって暴れるのも当然です。」
「仕方ないだろう。あんなに泥だらけでは、抱っこなんて以ての外だし。ああして首を摘むしかない。」
「ミャ、ミャ……。」


糸のように細めていた目を、遂に閉じてしまった猫ちゃんは、アフロディーテ様の腕の中で、ゴロゴロと喉まで鳴らし始めた。
真っ白でふわふわの猫ちゃんが、誰もが認める麗しの美男子・アフロディーテ様に抱っこされて気持ち良さげに眠っている様子は、それが一枚の絵画かと思えるくらいに素敵で、眺めている私の方が思わず溜息を漏らしてしまいそう。


「お似合いですよ、お二人。」
「本気で言っているのかい、アレックス? 私と、この猫が?」
「はい。上品そうな猫ちゃんですから、アフロディーテ様以外の方では不釣り合いかと。」
「お似合いねぇ……。」


猫ちゃんを抱っこしたまま、ポスリとソファーに座り込む。
多少の衝撃はあったようだが、すっかり彼の腕の中に満足している猫ちゃんは、瞼を開けて目覚める事もなく、安心して眠り続けていた。


「じゃ、この子は双魚宮で面倒を見るって事で、決定ですね。」
「まさか、アレックス。本気でコイツを飼うつもりかい?」
「その、まさかですけれど……。あ、名前はアナスタシアが良いでしょうか? それとも、ローズマリー? 折角ですから、綺麗な白薔薇の名前を付けて上げましょうね。」
「全く、キミは……。そもそも、この猫は雄じゃなかったのか? それは、どちらも女性の名前だろう。」


アフロディーテ様は呆れの溜息を吐きながら、膝の上の猫ちゃんの頭を優しくゆっくりと撫でる。
その仕草が、もうすっかり猫ちゃんと仲良しな飼い主さんになったみたいで。
微笑ましく思った私は、ほっこりとした気分で、そんな一人と一匹の横に腰を下ろした。



と暮らす日々
素直じゃない貴方と猫ちゃん



(アフロディーテ様、本当は猫ちゃんが可愛くて仕方ないのでしょう?)
(違う。私は猫になど興味はない。)
(そんな事を言って。目尻が下がっていますよ。)



‐end‐





猫と暮らすシリーズ第8弾、ディテ様編。
ツンデレな魚さまと、ツンデレな猫ちゃんの組み合わせが萌えるなと、思いまして。
反発しながらも、結局は仲良しになった挙句、溺愛してくれると思います、ディテさまw

2014.10.13



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