予想外でした。
猫が沢山いると聞いていたから、てっきり猫好きの人が大切に彼等を育てて、面倒をみているのだとばかり思っていたのに。
実際の磨羯宮の状況を見て、吃驚です。


視界に映る現状は、『飼っている』というのではなく、『自由に出入りさせている』というのが当たっている。
開け放した扉から、猫ちゃん達が好きに入って、好きに寛いで、好き勝手に走り回り、気が向いたら餌を食べて、そして、飽きたら出ていく。
ココは聖域中の猫の集会所、猫サロンと言っても過言ではない。


そうだわ。
確かにミーノス様も、猫が沢山『いる』とは言っていたけれど、『飼っている』とは言わなかった。
成程、これならば引き取る事も自由な筈よね。
山羊座の彼が、自分で育てて飼っている訳じゃないのだから。


「仔猫なら奥にいる。好きに持っていって構わん。今なら選り取り見取りだ。先日、雌猫共が立て続けに産んだからな。」
「いや……、仔猫も可愛いんだけどさ。俺、大人の猫の方が良いかも。」
「ええっ?! 駄目ですよ、アイアコス様、仔猫じゃなきゃ!」
「だって、見ろよ、アレックス。このスラッとしたフォルムと、背を伸ばして座る姿の凛々しさ、ツンと澄ました顔。仔猫じゃ、この孤高な雰囲気は出せないだろ。やっぱ猫は、こうでなきゃなぁ。」


そう言って、辺りをウロウロしていた猫ちゃん達を追い駆け回しては、彼等にワラワラと逃げられているアイアコス様。
どうにも彼の気持ちとは裏腹に、猫ちゃん達には迷惑がられているような気がしてならない。


「猫は環境の変化に敏感ですから、大人の猫を冥界に連れていくのは、どうかと思います。アイアコス様のストレスが消える前に、猫がストレスで参ってしまいますもの。しかも、場所が場所だけに、自由に外出も出来ないでしょうし、大人の猫では順応は難しいかと。仔猫の内から慣らすのが一番です。」
「いやいやいや。やっぱり引き取るなら、気に入った猫が良い。この黒猫、凄ぇ気に入った。コイツにしよう。」
「いや、駄目だ。ソイツだけは俺が飼っている。渡す訳にはいかん。」


アイアコス様が指で示した先にいた黒猫は、それはそれは艶々と良い毛並みをしたスラリと美しい黒猫だった。
だけど、その猫だけは山羊座の彼が『飼っている』猫らしく、譲る事は出来ないという。
好きな猫を持っていって良いと言われていたアイアコス様は、話が違うと大きく頬を膨らませて抗議した。
だが、ツラッとした表情で受け流す山羊座の彼と、それに食って掛かるアイアコス様の様子は、まるで大人に喧嘩を売る子供の図だ。
見ていて、恥ずかしくなってくる。


「なら、俺は毎週、ココに通う。その猫と過ごすために。」
「ふざけるな、ガルーダ。三枚に下ろして、冥界に付き返されたいのか?」
「お前がコイツを譲ってくれさえすれば、それで問題なしなんだよ、山羊座。」
「アイアコス様。だったら、この黒い仔猫にしましょう。猫なんですから、直ぐに大きくなりますよ。」


我が儘な彼の方が、猫よりもずっと手が掛かる。
これから一体、どんな生活になるのやら。
考えると溜息ばかり出てきた。



と暮らす日々
彼は猫と大騒ぎ



(特別サービスだ。この仔猫も持っていけ。)
(おお、雌の白猫か。可愛いな。)
(ええっ?! 雄と雌で飼ったら、繁殖して増えちゃいますよ!)



‐end‐





猫と暮らすシリーズ第3弾、アイコ編。
正直、アイコのキャラをどうするかで迷ったのですが、結局、『冥界のミロ』っぽい仕上がりに(苦笑)
きっと無計画に繁殖させて、結果、面倒をみきれなくなり、部下達に一匹ずつ強制的に仔猫を与えてそうな、そんなアイコですw

2014.01.21



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