7.もどかしい想い



楽しげに歩くアシュの後ろ姿を見つめながら、やはり彼女も女の子だなとアイオロスは思っていた。
いつもは控えめで大人しく、決してはしゃいだりしないアシュも、ショッピングとなると目を輝かせて、立ち並ぶショップのウインドウを眺めている。
そんな姿が新鮮で、見ていて飽きない。
それどころか、益々、彼女に心惹かれ、目が離せなくなる。


好みの雑貨などを見つけては、嬉しそうに顔を綻ばせて振り返るアシュを見ていると、自分も何だか嬉しくて楽しい気分になっていくのを、アイオロスは心の奥でじんわりと感じていた。
きっと、他の女の子が相手だったら、途中で退屈になったり疲れてきたりもするのだろうが、アシュとならば不思議とそんな気分にはならない。
寧ろ、ずっとこうして並んで歩いていたいとさえ思える。


「ロスにぃ、見て。これ、とっても可愛い。」


そう言って、目を細めてガラスの向こう側を眺めるアシュの横顔が、世界中の何よりも可愛いとアイオロスは思った。
真横に並んだ今なら、腕を伸ばせば容易くアシュの肩を引き寄せられるだろう。
いや、この人目の多い場所では、流石にアシュが恥ずかしがるかもしれない。
ならば、せめて手を繋ぐくらいなら……。


視線を落とせば、そこにはアシュの白く華奢な右手が目に映る。
この小さな手を、自分の大きな手で包み込んで離さないように。
ずっとずっといつまでも心を繋いでいられるように、強く握り締めたい。


そう思ったアイオロスが、そっと手を伸ばし掛けた、その時。
その気配に全く気付いていなかったアシュが、「あっちも可愛い。」と声を上げ、スッとその場から動き出した。
彼女に届かなかったアイオロスの左手が、空しく宙を切る。
小走りに前を進むアシュの背中を見つめ、アイオロスは小さく溜息を吐いた。


甦ってからというもの、アイオロスはまだ、女官服を着たアシュの姿しか見た事がなかった。
しかし、今日の彼女の足元では、鮮やかな色をした黄色い膝丈のフレアースカートが柔らかに揺れている。
トップスのフワリとした黒のセーターと、肩から斜めに掛けた小さな黒い革のバッグがバランス良くコーディネートされていて、清楚で、かつシックな大人の雰囲気がアシュにピッタリと似合っていた。





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