だが、アシュリルはアイオリアの想いとは裏腹に、扉が全て開け切る前に飛び出し、その大きな胸の中へと飛び込んできた。
アイオリアの姿を見た途端、居ても立ってもいられなくなったと言わんばかりに、しっかりと腕を回して抱き付いてくる小さな小さな身体の彼女。


「……アシュリル?」
「私は……、私はアイオリア様を愛しています! 拒否されても、受け入れて貰えなくても、何度だって言います! 私はアイオリア様が、好きっ!」


アイオリアの胸に顔を埋め、涙をボロボロと流しながらアシュリルは声を張り上げた。
何度告げても届かなかった想い。
今度こそ受け止めて欲しいと、強い想いを籠めて言葉を紡ぐ。


「貴方が好きです。貴方を愛しています。例え、この場所に、一生閉じ込められていても構わないの。だから……、だから傍にいさせて下さい。アイオリア様の傍に。」
「アシュリル……。そんなに、そんなに俺の事を?」


止め処なく流れる涙を拭う事もせず、コクコクと頷くアシュリル。
その腕は絶対に離さないと言わんばかりに、強く強くアイオリアの身体にしがみ付いている。
アイオリアは恐る恐る腕を上げると、そんな彼女の身体へと腕を回した。
壊れものに触れるかのように、そっと細く小さな背に触れる、アイオリアの大きな手。


「こんな俺で良いのか? こんなにもアシュリルを傷付けた、俺でも……。」
「私は……、私は傷付いてなどいません、アイオリア様。」
「こんな俺が、愛しても良いのか? アシュリルの事を、愛しても?」
「私にはアイオリア様しかいません。だから、だから――。」


頑なに閉ざされ続けていたアイオリアの心の扉が、今、やっと開いた。
閉じ込められていたのはアシュリルではない。
それは、アイオリアの心だった。
固い固い頑丈な鍵を掛けて、誰一人、何一つ受け入れようとはしなかった雁字搦めの心。


そして、この時、アイオリアはアシュリルの心からの告白を、やっと受け止める事が出来た。
何故、今まで彼女の言葉を信じる事が出来なかったのだろう。
こんなにもアシュリルは自分の事を想ってくれていた。
あんなに酷い仕打ちを受けてもまだ、自分を愛していると言ってくれている。
どうして、この愛しい彼女の言葉を、正面から受け止めてやれなかったのだろう。


何もかもを疑い、愛する彼女の言葉にすら耳を傾けられなかった先程までの自分を、酷く腹立たしく思いながら、アイオリアはアシュリルを抱き締める腕に力を籠めた。
この二日間、一方的な情熱で何度も無理に抱いた身体は、こんなにも小さかったのだと改めて気付き、胸の痛みが更に増す。


「俺もアシュリルを愛している。俺にも、アシュリルしかいないんだ。ずっと、この五年間ずっと、この心はアシュリルだけのものだった……。」
「アイオリア様……。」


腕の中からアシュリルが顔を上げる。
見つめ合うのは、後悔に揺れる緑の瞳と、潤んだ漆黒の瞳。
そして、当然の引力に導かれ、重なる二人の唇。
アイオリアとアシュリルは、目の前にアイオロスとシュラがいる事も忘れて、激しく情熱的なキスを交し合った。





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