同時刻、磨羯宮。
そこは混乱に包まれていた。


「オイ! こっちにはいなかったぞ!」
「クソッ! 何処へ行きやがった?!」


何処からか光速で戻ってきたミロが、その場にいた他の三人に合流する。
苛々と落ち着かないデスマスクは、強く唇を噛んで、足を踏み鳴らした。
深い溜息を吐き、頭を振るアイオロス。
そしてシュラは、あまり表情には出ていないが、落ち着かない様子で何度も手を握ったり開いたりしている事から、激しい焦燥に駆られている事が分かった。


「アシュリルがいなくなったのは昨日の夕方だろ? 巨蟹宮は通ってねぇぞ。」
「天蠍宮は通ったのを覚えてる。だが、戻って行く姿は見ていない。」
「人馬宮もだ。」


そう、皆は姿を消したアシュリルを探していた。
昨夜、いつまで経っても戻って来なかったアシュリル。
心配になって磨羯宮の周辺を探していたシュラに気付き、アイオロスも共に捜索に出たのだが、結局、夜の内には見つからなかった。
朝になり、話を聞き付けたデスマスクとミロも加わり、大掛かりな捜索を開始したが、未だアシュリルは見つかっていない。


十二宮の階段の周辺、近くの森、少し足を伸ばして一般人居住区の辺りや聖域内の市場、広場や祭祀場。
雑兵達の宿舎にまで足を運んだが、その何処にもアシュリルらしき人の影も痕跡すら見つけられない。
デスマスク、ミロ、アイオロスの三人は、顔を見合わせて頷いた。
そして、険しい表情のシュラを振り返る。


溜息を吐いたシュラは無意識に自身の髪を掻き毟り、キツく唇を噛んでいた。
握ったり開いたりしていた手を、今度は強く、爪が食い込みそうになる程に握り締め、そのために指の関節が白く浮かび上がる。
そんなシュラの様子に、三人は小さく目配せをして頷き合った。


「皆には申し訳ないのだが、もう一度、手分けして探してみないか?」
「あぁ、分かった。」
「申し訳ないなんて言うな。大事な家族じゃないか。」


シュラの申し出を受けて、アイオロスがその肩をポンと叩いた。
ミロとデスマスクも、しっかりと頷く。
シュラは一瞬だけ切れ長の瞳を見開くと、「すまん。」と一言、小さく呟いた。
それを聞いて、デスマスクとミロは、直ぐに磨羯宮を飛び出していった。





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