しかし、同じ歳だと聞くと、先程まで感じていた距離が、一気に縮まったような気がするのは気のせいだろうか?
それまで年上だと思っていたからこその気後れが消えてなくなり、目の前の大人びた少女に対して、不思議と親近感すら湧いてくる。


この笑顔と、この容姿。
成る程、ミロとデスマスクの二人が熱心に言い寄るのも分かる。
現に自分自身も、アシュリルのみせる色んな表情に、目を奪われてばかりいるではないか。
ただし、それが『恋』の始まりだという事に、当の本人であるアイオリアは気付いていないのだが……。


「同じ歳か……。何だか自分があまりに落ち着きがないように思えて、溜息が出そうだ。」
「でも、年齢じゃないと思いますけど。あの……、アイオリア様は、今のままのアイオリア様で良いと思います。上手く言えないんですけど、落ち着き払ったアイオリア様は、きっと、アイオリア様じゃない人みたいになってしまう気がします。」
「アシュリルの言いたい事は分かる。俺もそう思うぞ。アイオリアは今のまま、素直なままでいて欲しい。」
「何だか喜んで良いのか、悲しんで良いのか、分からないのだが……。」


あまり褒められている気はしないぞ。
言葉にして伝えはしないものの、素直な性格ゆえ、憮然とした顔が如実に語っている。
そんなアイオリアの表情を見て、シュラはフッと軽い笑みを零し、アシュリルはクスクスと声を立てて笑った。
それがアイオリアを気まずくさせたのだろう。
それまで手を付けていなかったパンに手を伸ばし、アイオリアは勢い良く頬張った。


「っ?! このパン、どこで買ったんだ?凄い美味いな。」
「あぁ、それか。」


一口齧った手元のパンをジッと見つめるアイオリアに、シュラは待ってましたとばかりにニヤリ笑いを浮かべた。
自分もテーブルの中央に置かれた籠からパンを一つ手に取ると、それを半分に割って、自らの口の中へと運ぶ。


「これはアシュリルの手製だ。俺も初めて食った時は驚いた。あまりの美味さにな。」
「そんな事ないわよ。これくらい普通じゃないかしら。」
「いや、美味いと評判の店でも、これには勝てないと思うぞ。こんな美味いパンを食ったら、もう他のは食えなくなりそうだ。」


そう言いながら、アイオリアは手にしていた残りのパンを口に放り込み、何度も咀嚼して、その美味さを味わう。
見た目はごく普通のパンと違いはないのだが、味は格段に美味い。
何より、この食感。
外はしっかりと硬く焼き上がっているのに、中はふんわりと弾力があり柔らかい。
噛むとジワッと口内に広がるのは、パン自体の甘さ。





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