すれ違い続ける。
想いは一つなのに
気持ちは繋がらなくて……。






1.少年と少女の出逢い



大きく傾き始めた夕陽を横目に見ながら、少年アイオリアは十二宮の階段を駆け上がっていた。
向かう先は、山羊座のシュラの守護する磨羯宮。
あの事件の後、暫くは兄の仇と思い恨んでいた相手ではあったが、それも幼さ故の思い込みで。
共に神々との厳しく辛い戦いを乗り越え、暗黙の内に互いの抱える思いも、苦労も苦悩も、いつの間にか理解するようになっていた二人。
十五歳となった今、シュラはアイオリアの良き先輩であり、頼れる同僚であった。


こうして互いの宮を頻繁に行き来するようになるまで信頼関係を修復出来るなど、あの幼い日々を思えば嘘のようにも感じる。
激しく憎んだ相手ではあったが、シュラという人物やその考え方を知り、彼に対する憎しみは、いつの間にか消えていた。


今では極普通に接し、寧ろ、黄金聖闘士の中でも比較的気が合うと言うか、気心の知れた相手としてシュラとは話がし易く、共にいて落ち着く。
元々、シュラがアイオリアの兄を慕っていた事もあり、物心ついた頃から二人目の兄のように思っていた相手だ。
ただ行き場のなかった怒りをシュラにぶつけていただけの幼い反発心を取り除いてしまえば、そこに余計な障壁などありはしなかった。


この日、アイオリアはシュラから磨羯宮での夕食に誘われていた。
特に断る理由もなく、午後の修練を終えた後、颯爽と磨羯宮へ向かって駆け上がっていく。
磨羯宮で出される料理は美味い。
その殆どをシュラが作っていると聞いて驚いたのだが、食べ盛りで伸び盛りのアイオリアの事を考えて栄養価が高くバランスの取れた食事を用意してくれていると知って、更に驚いた。
何だかんだ言って、アイオリアにとってシュラは、やはり兄のような存在なのである。


長い階段の最後の数段を軽やかに駆け上がると、そのままスキップするような軽い足取りで宮内を進む。
夕陽に照らされ眩しい程だった外に比べ、陰鬱に薄暗い宮内を、実に楽しそうに進むアイオリアの姿は、傍から見れば滑稽で似つかわしくない様子なのだが。
本人は全くに気しないどころか、今夜の食事は何が出されるのかと、そんな期待に胸を躍らせながら、力強くプライベートルームへと続く扉をノックした。





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