憂鬱だらけのDay Off



働き過ぎのサガへ


海界へ行ってきます。
気が済んだら戻ってくるから、心配しないで。


アイリスより



***



一週間振りに戻った自宮は、ヤケに寒々としていた。
人の気配がない。
いつもならアイリスが、元気一杯にこやかな笑顔で出迎えてくれるのに、今朝はそれがなくて拍子抜けした。
買い物にでも行ったのだろうかと思いながら、部屋へと入る。
リビングのテーブルの上に置き手紙を発見して、やっと理解した。


あぁ、ついにアイリスにも見放されたのだ、と。


それも仕方ないのかもしれない。
常に仕事を最優先し、自分の守護する宮だというのに滅多に帰宅もしない。
たまに帰って来たかと思えば、食事をして、風呂に入って、軽く睡眠を取って、そして、また教皇宮へと向かう。
そんな日々の連続だ。
大らかで心の広いアイリスだって、そんな私に呆れ果てたのだろう。
自分が女ならば、まずこんな男はゴメンだと思う、その典型だからな、私は……。


何だか酷く脱力して、ノロノロと椅子に腰を下ろすと、テーブルの上に置かれた手紙を手に取った。
丸くて女らしいアイリスの文字が並ぶ手紙。
極短い文面と、滑らかに走る文字の跡に、迷いや憂いなどは少しも見受けられない。
この宮を離れると決めたからには、そこに躊躇いなど生まれなかったのだろう。


それよりも何よりも、その手紙の日付に愕然とした。
今から三日前。
どうりで寒々としてる筈だ。
アイリスは三日も前に、この手紙を残して双児宮から去り、海界へと向かったのだから。


アイリスのいない部屋は妙に静かで、いつもよりもずっと広々としているように感じられた。
彼女がこの宮を出て行った事も知らずに、仕事にばかり没頭していた自分が嫌になる。
だが、私とて好きで執務に追われている訳ではないのだ。
そう心の中で呟いても、それは単なる言い訳にしか思えなかった。


これから、どうするか……。
なりふり構わず追い駆けて、海界まで乗り込むか?
お前の居場所は海界ではない、聖域の双児宮の中だとでも言って、無理にでも連れ帰るか?


いや、待て。
徹夜続きで頭が鈍っているところに、この置き手紙攻撃だ。
更には、午前の強い日差しを浴びながら、教皇宮から歩いて下りてきたものだから、頭の中が少々眩んでもいる。
ココは少し冷静になる必要があるのではないか?
一旦、風呂にでも入って心を落ち着かせ、少し睡眠を取った方が良い。
その方が、もっと良い案が浮かぶかもしれないし、冷静になれば大した問題でもないかもしれない。
あぁ、そうだ、それが良い。





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