星のキレイな夜だから



思わぬ場所でアミリアに会った。
予期せぬ出会いに呆然としていた俺に、「星があまりにもキレイだったから。」と、彼女はにっこりと笑って言った。


「驚いたな、俺もだ。」
「アイオリアも?」


今度はアミリアが驚いた顔をする番。
それもそうだろう。
星がキレイだからなどという理由で夜中に散歩に出るなど、生まれてこの方、一度もなかった。
そういうのが俺のイメージじゃないのも、自分自身、良く知っている。


「アイオリアは早寝早起き、規則正しい生活してる人だと思ってた。」
「普段はその通りなんだがな。だが、今夜は……。」


不思議と目が冴えて、眠れなくて。
別に何かした訳でも、コーヒーを飲み過ぎた訳でも、気分が高揚している訳でもなく。
本当に、ただ何となく寝そびれてしまって、今に至ったのだ。


「久し振りだな、こんなにのんびりと星を眺めるのは。アミリアは、いつも一人で?」


星を眺めに夜の散歩へ出ているのだろうか?
真横にいる彼女を見下ろせば、コクンと小さく頷く。
そうか、ならば今日のような星のキレイな夜に外へ出れば、アミリアに会える可能性はあったのだな。
春の夜も、夏も夜も、俺は何も知らずにチャンスを逃していたのか。
そう心の中で溜息一つ。
そして、再び星空を見上げる。


気が付けばこの夜空も、いつの間にか秋の星座に移り変わっていた。
夜空の真ん中に輝くペガサス座を見上げながら、隣にいるアミリアの気配に意識を集中させる。
アミリアに心惹かれていると気付いてから、もう三つ目の季節。
彼女にアピールをしてみるとか、好きだと告げてみるとか、そんな努力を何一つしなかったせいもあるが、全く変わらない状況に、俺はいつしか諦め掛けていた。


この恋の行方は、いつか消えてなくなるもの。
そう思い込んでいた俺は、昨日までの俺だ。
この星のキレイな夜に、アミリアへの想い、その深さを再確認したから。


きっと、この出会いは臆病な俺を嘲笑う神の悪戯。
ならば、俺はあの星を味方に付けよう。
力をくれる、永遠に瞬きを止めない、あの星達がきっと勇気をくれる。



輝く星の下で、華奢なその手を握り締めた



「……アイオリア?」
「暫く、このままでも良いだろう?」


小さく頷いたアミリアの顔が、僅かに赤く染まって見える。
繋いだ手が熱い、それが彼女への想いだ。
ゆっくりでも良い。
いつかこの腕で彼女の全てを抱き締めてみせると、俺は心の奥に誓った。



‐end‐



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