「何で、嘘だと思うの?」
「何でって……。アミリ、今にも泣きそうだから。」
そうだ、その灰色は、今にも泣き出しそうな空の色。
彼女の全身が叫んでいる、『泣きたい』のだと。
俺には、そう聞こえて仕方なかった。
「泣きそう? 私が?」
「あぁ。瞬きしたら、直ぐにも涙が零れてきそうだ。」
「嘘、よ……。」
「嘘? 俺がそんな嘘吐いて、どうする?」
もしかしてアミリは、自分で気付いてなかったのか?
こんなにも身体中に涙が溜まっている事に。
きっと今まで、悲しみの表現を知らなかったのだろう。
いつも涼しげに表情を崩さない彼女だから。
「私……、振られたのよ。失恋、しちゃったの……。」
「そうか……。悲しいのか?」
「うん、悲しい……、と思う。」
「じゃあ、泣けよ。悲しい時は、思いっきり泣いたら良い。何なら胸を貸してやるぞ。俺で良ければ、だが。」
「……ありが、と。ミロ。」
俺の名前を呼んだ声は、もう涙に混じって良く聞き取れなかった。
何故なら、既にアミリは俺の胸に顔を埋めて、激しく泣きじゃくっていたから。
ただ、泣き方を知らなかっただけだった
充満した酒の匂いに、むせ返る部屋の中。
涙が枯れるまで泣き尽くした彼女は、俺の胸から顔を離すと、憂いの混ざった笑顔を零した。
それは何処か清々しく俺には見えて。
もう、そんなにも彼女の事は苦手ではないと、寧ろ守ってやりたいとさえ、この時、思っていた。
‐end‐
突発的にミロたんが降臨されました。
ホントに突然です。
この後、ミロたんと夢主さんの間は、果たして恋愛に発展するのか?
そこはご自由にご想像くださいませ。
2008.06.16