寂しがりやの



正直言うと、彼女の事は苦手だ。


キリッと切れ長の瞳が艶やかで色っぽいと評判のアミリ。
その黒い瞳から送られる流すような視線、男なら誰もが勘違いするだろう。
だが俺は、あまり表情を崩さないクールさ、悪く言えば能面のようなアミリの無表情が、どうも好きになれなくて。
他のヤツ等のように、彼女を恋愛の対象として捉える事が、どうにも出来なかった。


それを知ってか知らずか。
アミリは頻繁に俺の宮に来ては、二人で飲もうと俺を誘った。
誘うと言っても、ソッチの意味ではなく、本当に飲み明かすだけ。
そして、勝手にキッチンに入り込んで、勝手にグラスを持ち出して、勝手に飲み始める。
飄々と言うか、淡々と飲み続ける彼女は、やはり女としての可愛げが何処にもない。
他の男共が、彼女の一体、何処に魅力を感じているのか、俺には分かりかねた。


「前から気になっていたのだが……。何故、俺の宮に来る? 他の宮に行けば、皆、アミリと飲めると大喜びするだろうに。」
「大喜びされたくないから、ココに来るの。ミロは私に下心ないって分かってるから。」


サラリと言う、その台詞。
益々、可愛さが失せる。
もっとこう「ミロといるのが楽しいの。」とか、嘘でも言ってくれれば、それなりに可愛げも出るというものなのに。
まぁ、アミリにそんな事を言われれば、薄気味悪くなる事、確実だろうが……。


「女ってのは、チヤホヤされる方が嬉しいんじゃないのか?」
「チヤホヤされれば、その分だけ、何かを返さなきゃいけないでしょ。疲れるわよ、そんなの。私は憂さ晴らしに飲みたいっていうのに、いちいち面倒臭い。」


面倒臭いって、アイオリアみたいな女だな。
表情ひとつ変えずに、ガバガバと強い酒を煽るアミリは、何を考えているんだか、それとも何も考えていないんだか、それすら分からない。
そんな彼女を横目で見つつ、俺も同じように酒を煽りながら、やはりアミリの事が苦手だと思った。


もっとこう、嬉しいとか悲しいとか、楽しいとかつまらないとか、好きとか嫌いとか、ハッキリと伝えてくれる女の子の方が、断然好ましい。
何考えているんだか分からない相手には、こっちもどうして良いか分からないし、それでアレコレ振り回されるのは、俺としても気分が悪い。


ただ、こうして横で酒を飲んでるだけであれば、さして問題もないから気にならないが。
俺もアミリも、自分勝手に好きなように飲み続けて、気が済んだら、それでお終い。
余計な気遣いはしなくて良いから、これはこれで良いのかもな。
グイッとグラスに残った酒を飲み干して、ふと、そんな事を思った。





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