「でも可愛いですね、これ。こんな形の風船もあるなんて、知らなかった。」


手にした風船をしげしげと眺めながら、楽しそうな笑みを浮かべているアイリス。
そんな彼女を見つめていると、ちょっとだけ自分の方が優位な立場に立っているかのような気分になる。
そう、これから私が起こす行動に対し、彼女がどのような反応をするのかを想像して、心の内でほくそ笑んでいたと言っても良い。


「あぁ、忘れていた。お返しは、それだけじゃなかったんだ。ほら、アイリス。これも・・・…。」
「え……? あ、ちょ、ちょっと、アフロディーテ様! そ、それは駄目で――。」


――パアーーン!!


「きゃあっ!!」


彼女の言葉が終わるか終わらないか。
その悲鳴に近い声に重なって、風船が割れる爆発音が薔薇園中にこだました。


もう一つのお返しと言って、私がアイリスに差し出した物。
それは今が盛りとばかりに真っ赤に咲き誇る薔薇だった。
それを彼女へ渡そうと差し出した時、その薔薇の棘が風船を掠ったのだ。
勿論、偶然の出来事ではない。
それは私が意図して行った事。


「あん、もう! 折角の可愛い風船、割れちゃったじゃないですか。アフロディーテ様ったら!」
「まさかアイリスは、私がうっかり風船を割ってしまったのだと思っているのかい?」
「……え?」
「この私が、そんなヘマをやらかすとでも?」
「や、いえ……。そんな事はない、とは思いますけれど……。」


余裕の笑みを浮かべる私の様子を見てか、それとも、私の吐いた少しだけ厳しい言葉に怒らせてしまったのだと勘違いしたのか。
ややシュンとして肩をすぼめ、オドオドと小さくなるアイリス。
そんな彼女も可愛らしいとは思いながらも、今日のメインはそれじゃない。
私が欲しかったのは、アイリスの満面の笑みだ。
ココに咲き誇る薔薇達も霞んでしまうくらい、パッと鮮やかな彼女の笑顔。


「ほら、ちゃんと自分の前を見ていなきゃダメだよ。そうしないと、大切なものを見逃してしまうからね。」
「え? あ、これ……。」


彼女が見つけるのを待っていられなくて、というか、このままではいつまでも見つけては貰えないだろうと、仕方なく私が『それ』を指差すと、やっと気付いたアイリスは、とても驚いた顔をして。
恐る恐る手を伸ばして、それが何だか、ひと目で分かる小さな箱を手に取った。


「あ、あのあのっ! これって、もしかして……。」
「もしかしなくても、そうだけど。」
「だって、これ『指輪』じゃないですか! こんな高価なお礼は受け取れな――。」


言い掛けたアイリスの言葉を、彼女の唇に人差し指を押し付けて遮る。
ちょっと考えれば分かるだろう?
それとも分からないのかい、鈍いキミの事だから。



ハートに閉じ込めた想いは、キミへの恋心



「今日は私の誕生日なんだ。だから、これはキミから私への誕生日プレゼントなんだよ。勿論、受け取ってくれるね。」
「え、あの。意味が分からないのですが……?」


キミがこれを受け取ってくれれば、私は『アイリス』という最高の贈り物を手に入れる事になる。
素晴らしい誕生日プレゼントじゃないか。
だが、まだその意味を理解出来ていない彼女は、目を白黒させて私を見ている。
そんなアイリスを引き寄せて、優しいキスを。
この唇が離れる頃には、彼女にもきっと伝わるだろう。
私のこの深い想いが。



‐end‐





風船バーン! でヒロインを吃驚させて喜ぶ、ややSなお魚様です(笑)
何か色々と想像(妄想)してニヤリとしているなんて、悪い男ですよ!
しかし、相変わらずウチのお魚様はキザで策士だわ;
もっと素敵なお魚様の書き方を教えてください(切実)

こんなグダグダでも、心籠めたから許してね。
数分早いですが、アフロディーテ、お誕生日おめでとう!

2009.03.09



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