俺と彼女の関係性



俺が彼女と付き合うようになって半月が経つ。
告白をしたのは、俺の方から。
望みは薄いだろうと分かっていたから、当たって砕けろな気持ちで思い切って告白したところ、何と『OK』の返事をもらえた。
それは本当に予想外の出来事だったので、その時は、嬉しさよりも驚きの方が大きかった程だ。


だが、お陰で更なる悩みも増えた訳で。
悩みと言うには些細な事かもしれないが、毎日を一緒に過ごす間柄ともなれば、それも積み上がって大きな障害になってしまう。
そう、どんな時も何をしていても、俺は彼女にどうしても『遠慮』してしまう。
それが俺の大きな悩みだった。


付き合ってさえいなければ、これは悩みにすらならなかった事。
だが、恋人となった今では、大き過ぎる問題。


というのも、彼女は俺より四歳も年上だった。
だから、彼女に対する遠慮も、これまでの日々の中で脈々と培われてきたもの。
それは、そうそう壊せるものでも無くせるものでもない。
身に染み着いた習慣は、簡単には変えられないのだ。


「……アリナー。」
「ん、何、アイオリア?」
「あ、いや、その、だな……。」


今日こそは、出掛ける前に『いってらっしゃいのキス』をして欲しいと思っていたのだ。
だが、なかなかそれを言い出せない自分。
そして、俺がそんな事を思っているなど、さっぱり察してくれないアリナー。
これでは恋人同士と言うよりは、姉と弟のようだ。
ただ一緒に暮らしているだけで、他は以前と何一つ変わりがない。


何も言わずに、その小さな肩を引き寄せて、少し強引でも良いから口付けてしまえば良いじゃないかと、心の中では思っている。
だが、それを行動に移せないあたりが、やはりアリナーに対する遠慮が消えていないのだ。


「はぁ……。」
「どうしたの? 溜息なんて吐いて。変なアイオリア。」
「仕方ない、俺も人だからな。溜息くらいは出る。」
「溜息を吐いた分だけ、幸せ、逃げるわよ。」


俺の葛藤なんて知ったこっちゃないのだろう、小首を傾げるアリナーが愛しくも憎らしい。
あぁ!
この溜息の原因は全て君だというのに、アリナー!
年上なんだから、少しは察してくれたって良いものを。


いや、だからと言って、彼女にリードされてしまうというのも、男としては、ちょっとどうかと……。


「……何、アイオリア?」
「ん? 別に俺は何も言っていないが。」
「口では何も言ってないけれど、顔は思いっ切り何かを言いたそうだわ。」


そんなところばかり鋭いんだな、アリナー。
そうではなくて、俺が分かり易過ぎる、顔に出過ぎるのか?
せめて俺とアリナーが『聖闘士と女官』として過ごした期間が、もう少し短ければ良かったと思う。
さすれば、こんな遠慮などするようにならなかったのに。
俺はこれまでの日々、アリナーの事を『年上でしっかり者の女官』として頼り過ぎてしまったのかもしれない。


だから、俺の中で上手く切り替えが出来ないでいるんだよな……。


「遅れるわよ、アイオリア。」
「あ、あぁ……。」


曖昧な返事を残して宮を出ていく俺に、また小首を傾げて見送るアリナー。
背中に感じる彼女の視線を恨めしく思うのは、この場合、仕方ないだろう。





- 1/4 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -