不意に、絡み付くようにアイオリアの指先が下りてきて、頬を円を描くように撫でた。
太くて無骨な指の感触に、また高まる心の奥。
そのまま、その指が辿り着いた先。
薄く開いた唇を、ザラリとした指の腹が滑るように往復し始めれば、胸の奥が切なさにキュンと音を立てる。


「なぁ、アリナー。こうしてお前を強く抱いていると、胸がどうしようもなく高鳴ってくる。それも男だけが感じるものなのだろうか? それに、この唇にキスしたい欲求が高まってくるのは……。」
「バカね、アイオリア。それは男も女も同じよ。」


私の心も全く同じ。
アイオリアの身体に触れた瞬間から、胸の奥がドキドキと早鐘を打っている。
愛しい人の体温は、それだけで甘やかな温もりを感じさせるから。
そして、それも直ぐに別の欲求に変わる。
その先、もっと先へと、際限なく互いを求める気持ちへと。


「アリナー……。」
「んっ。」


私がアイオリアの首に腕を回すと同時に、彼の唇が落ちてきた。
性急過ぎるくらいに、最初から深い口付けに捕らわれて。
それは普段は穏やかで争いを好まない彼の、本来の荒々しさ、内に秘めた獰猛さ。
そんな攻撃的なキスを真っ正面から受け止めて、私は苦しさと同時に、それと紙一重の心地良さを感じていた。
そして、身体の内側の奥深くに、沸々と滾り始めた熱い疼き。


「ん、はぁ……。」
「なぁ、アリナー。」
「ん、なぁに?」
「このままベッドに行っても良いか? アリナーを抱きたい、今直ぐ。」
「っ?!」


確かに、私の身体も彼を求めて疼いてきている。
でも、まだ陽の高い夕方。
そういう事は、もう少しだけ我慢して、夜が更けてからでも良いと思うのに。


「アリナーの額から薄っすら汗の匂いがする。まるで情事の後のようで、凄く興奮するんだ。」
「やだ、直接的なんだから。」
「男なんて、そういうものだろ。」


恥ずかしげもなく「私が欲しい。」と言い切るアイオリアの、欲の熱に揺れる緑の瞳にジッと見つめられ、私は頬を染めて俯くしか出来ない。
その強い瞳に飲まれてしまえば、後は翻弄されて溺れるしかないと知っているから。
こういう時、女の意志は常に弱いもの。


「じゃあ、私が嫌だって言ったら?」
「この場でアリナーを押し倒す。」
「酷いのね。私に拒否権はないの?」
「そうなるな。」
「だったら、せめてシャワーを浴びさせて。階段を上ってきたから、汗を掻いているの。」
「それも却下だ。その汗が良い。より強く女の匂いがして、たまらない。」
「もう……、アイオリアのエッチ。」
「今更な言葉だ。」


私の答えを待たずして、隙間から潜り込ませた手で服を脱がそうとするアイオリア。
余程、気が急いているのだろう。
一刻の猶予も待てないのだと、耳元で荒くなる彼の呼吸から感じる。
私はその手を柔らかに制止すると、「お願い、ベッドまで連れていって。」と、優しく甘ったるく懇願した。



男は女の懇願には弱いもの



その言葉が、更にアイオリアの内側に火を点けたらしい。
私の身体を荒々しく抱き上げると、そのままドカドカと大きな足音と共に寝室まで向かって。
ベッドの上へ乱暴に投げ出され、乱暴に圧し掛かられて、乱暴に服を剥ぎ取られて。
そのまま情熱の嵐の中へと放り込まれる。


でも、それで良かった。
そうして激しくして欲しいと、心の片隅で思っていたのだから。
きっと、それが女の性(サガ)なんだろう。



‐end‐





きっとコレ、蟹氏や山羊さまでは成立しない話。
ニャーくんだからこそ美味しい、ニャーくんだからこそ暴走する結果に流されるみたいなw
あれ?
結局、ニャーくんは知らず知らずに夢主さんに誘導されているのかしら(苦笑)

2012.08.05



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