sweet sweet our night



ギシィッと大きな音を夜の静寂(シジマ)に響かせて、小さなベッドが切なく鳴いた。
一人で暮らす私の部屋には、狭く小さなシングルベッドしかない。
このベッド、私が一人で眠る分には何の問題もないのだけど。
今、この狭いベッドの上には、私の他にもう一人。


「アイオリア……、狭いよ。」
「俺のせいではないだろ? このベッドが狭過ぎるんだ。」


二人で眠るには狭過ぎるスペースに、火照る身体を寄せ合って。
ギリギリというか、ギッシリといった様子で、私達は無理矢理に収まっていた。


――ギシッ!


再び、大きな音を立ててベッドが軋む。
いや、悲鳴を上げる。
一目で気に入って買ってしまった、このベッドは、ラインが可愛らしい代わりに、デザインが酷く華奢だった。
その細いパイプのような足で、私の体重と八十五キロはあるだろうアイオリアの体重を、果たしていつまで支えていられるのか?
考えると、少し不安になった。


「ベッドが壊れたら、アイオリアのせいだからね。」
「何を言ってる、アリナー。俺一人のせいではないだろう?」


――ギギッ!


私の言葉に少しムッとしたアイオリアが身動きをすれば、先程より大きな悲鳴をベッドが上げる。
この音が響く度に、私にはその音が、ベッド崩壊へのカウントダウンに聞こえてならない。


「ほらぁ、動かないでよ。益々、壊れそうになるんだから。」
「そんな事を言われてもだな、動かないなど無理だ。」


仰向けから横向きに体勢を変えたアイオリアが、腕を伸ばして私の身体を抱き込めば、それに合わせてギシギシと軋むベッドが鳴き止まない。
さっきまでは、このベッドが壊れようが構わない、それこそ、切羽詰った激しい悲鳴をベッドに上げさせて。
そんな勢いで、夢中になって愛し合っていたというのに。
熱が冷めれば、頭も冷静になるというものか。
今、このベッドが壊れてしまっては困るのだと、愛しい恋人の腕に抱き締められながら、そう思う。


「壊れちゃったら、アイオリアが弁償するんだからね。」
「……は?」
「新しいベッドを、アイオリアが買うのよ。」
「……その必要はないな。」


アイオリアは一瞬、考え込んだ後、私のやや汗に濡れた前髪を掻き上げ、じっくりと唇を押し付けるようにキスをした。
そのキスの濃厚さに、私の身体は再び燃え上がりそうになり、慌てて心を冷静に保つ。


「必要ないって、どういう事? 私に床で寝ろって言うの?」
「いや、そうではなくて……。」


前髪を掻き上げていた手は、そのまま頭の後ろを回り、首筋から背中へと回される。
そして、アイオリアの無骨な指が背骨を辿って滑り落ち、その刺激に私の身体はビクッと反応した。





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