指で文を辿りながら、更に先まで目を走らせる。
と、アイオリアの指が途中でピタリと止まった。


「む、これか? この最後の一文、『どんなに寒い冬の日でも、常に上半身裸で見事な筋肉を惜しみなく晒し、修練に挑む姿、黄金聖闘士ともなれば寒さも吹き飛ばすのだろうか?』 間違いない。絶対に、これだな。この文を読んで、兄さんの立派な筋肉目当てに女達が集まってきたんだ。」
「あぁ、そうだ。ご丁寧に横の写真も半裸状態のものだし。この記事を書いたの、絶対に女だな。」
「多分、兄さんの熱烈なファンだろう。」


アイオリアとミロの会話を聞きながら、流石に『デイリー聖域』だわ、と思う私。
そんなに公平性を欠く贔屓目たっぷりの記者が記事を書くなんて、あって良いワケ?


溜息を吐きながら視線を走らせれば、遠く離れた席にアイオロスさんと彼の恋人さんが座っていた。
未だ半裸のまま笑顔を浮かべているけど、汗を掻いてるのに風邪を引いたりしないのかしら?
そして、その周りを遠巻きに囲んでいる女性達が数人。
うわぁ、あれは居心地悪そう、恋人さんは大変ね。
だけど、爽やか笑顔を浮かべてランチを掻き込んでいるアイオロスさんは、全く気に留めていない様子。


アイオリアと二人並んで、そんなアイオロスさん達の姿を口を半開きにして眺めていたら、背後からクスクスと悪戯な笑い声が響く。
驚いて振り返ると、その顔いっぱいに悪ガキみたいな笑顔を浮かべたミロが、開いたままの『デイリー聖域』を指差した。


「アイオリア、お前も半裸姿で後輩達の稽古でもすれば? 女の子達がいっぱい集まってくるぞ。」
「なっ?!」
「ちょっと、ミロぉ!」
「良いじゃん。お前だって変わらないぐらい立派な筋肉してるんだし。兄貴ばっか注目浴びてるなんて悔しいだろ?」


そう言って、ミロは写真の顔部分だけを指先で隠す。
まぁ、身体付きだけ見れば、余計にそっくりな兄弟ね。
でも、アイオリアの筋肉の方が、アイオロスさんよりもむっちりと付いている感じがする。
やっぱり日々のトレーニングの差かしら、アイオロスさんは執務やら何やらで忙しいから……。


「沢山の女の子にキャーキャー言われながら取り囲まれるんだ。なかなか味わえない優越感じゃないか。」
「嫌よ、そんなの。私、アレには耐えられそうにないもん。」
「あはは、確かに。アリナーには無理だな。」


未だに女の子に取り囲まれているアイオロスさん達を小さく指差しながら溜息を吐けば、ミロも可笑しそうに笑い声を上げる。
と、いきなりアイオリアがミロの腕に手を掛けたので、二人でそちらを見れば、彼はヤケに生真面目な顔をしていた。


「悪いが皆の前に身体を晒すなど出来ん。俺の身体はアリナーだけが見てくれれば、それで良いのだからな。」
「ぶっ! ゴホッゴホッ!!」
「あ〜、はいはい。ご馳走様〜、っと。」


とんでもない事を真面目な顔で告げたアイオリアに、私はお茶を噴き出し、ミロは呆れて肩を竦めた。
そんな反応をされる意味が分からないとムスッとしたアイオリアは、更に大真面目な様子で続ける。


「俺が脱ぐのはアリナーの前でだけだ。そうだろ?」
「そうだね、うん。そうしてくれると嬉しいな。」


肩に手を伸ばして私を引き寄せ、耳元に告げてくるアイオリア。
そんな彼に対して、私は乾いた笑いを浮かべつつ、その頭を良い子良い子と撫でてあげたら、途端に上機嫌になって。
有無を言わせず横を向かされ、次いで熱いキスが降ってきた。
全く、何て分かりやすい反応なのだろう。
でも、そのキスは、二人だけの時の、私の前でだけ堂々と服を脱ぐ夜のアイオリアを思わせる濃厚さを持っていて、何だか胸が高鳴った。



そんな貴方が誰よりも好き



「おいおい、こんなトコで熱烈チューなんてしてたら、『デイリー聖域』に撮られるぞ。」


呆れ果てたミロの声が聞こえたが、私たちは構わずに、そのままキスを続けた。
別に写真を撮られたって、記事を載せられたって良いもの。
だって、そうすればアイオリアは私だけのものだって事、皆が分かってくれるから。



‐end‐





ずっと書きたいと言っていた『デイリー聖域』関連夢です。
ロス兄さんが半裸を晒す人になってます^^;
リアが生真面目・単純になっていて、あまり格好良くないですねorz
もっと凛々しく格好良く素敵なリアが書きたかったのに、残念です。

※『デイリー聖域』とは、聖域内で一番人気のゴシップ新聞。
黄金聖闘士達のスクープネタなどが主な話題。

2010.02.28



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