delicious afternoon



人って、仕事が突然に休みになると、何をしたら良いのか分からなくなるものなんだと、私は今日の朝、初めて知った。
元々、今日は休日だったのだけど、休日を明日と交代して欲しい、そう仲良しの女官の子に頼まれたから、仕事に出る気満々だったのに。
朝になっていきなり、「やっぱり代わらなくても良いから。」とか何とか言われても、コッチとしても困るというもの。


突然の休みに暫く放心した後、私はノロノロと動き出した。
とりあえずは、すべき事をやらなくては。
明日の休みにしようと思っていた掃除やら、溜まった洗濯やらを片っ端から片付けて。
でも、そういった身の回りの仕事を全て終わらせても、まだ午前の終わりには二時間もあった。


「まだ十時、か。何しよう……?」


あらかじめ何をするか予定を決めていれば一日なんて早いものなのに、何もする事がない時は、こんなにも時の流れが遅い。
全く、明日の休みには目一杯の予定を組んであったのに。
丁度、今頃の時間は、アイオリアとアテネ市街で楽しくデートの真っ最中の筈だった。
秋物の服を買って、新しくオープンしたレストランでランチをして、アイオリアの欲しがっていた時計も買ってあげようと思っていた。
でも、それもこれも急な交代で全ておじゃん。
そう思うと、無意識に溜息が零れ出てくる。


だが、今更、愚痴を言っても仕方のない事。
諦めた私は、どうやって時間を潰そうかと部屋の中をキョロキョロと見回してみる。
すると、ダイニングテーブルの上に本が一冊、置きっ放しになっているのが目に止まった。
あれは……、アイオリアから借りたままの本だ。


昼までの二時間、これを読んでしまうには丁度良い。
読み終えたら、午後イチで獅子宮に返しに行こう。
アイオリアは今日、確か後輩指南の当番日。
本を置いてから、闘技場へ見学に行くのも悪くない。


残りの時間の予定に目処が立つと、今までの脱力感が嘘のように、急にやる気が出てきた。
人間っておかしなものだ。
アイオリアの訓練姿を見れると思うだけでワクワクして、私は中々、本の内容に集中出来なかった。





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